読書記録

読んだ本の感想まとめ。

ミステリと言う勿れ

not-mystery-movie.jp

  1. 長い。でも120分以上本編があるだけの価値はあると思う。
  2. もしかして原作で一度読んでる? でも新鮮な気持ちで楽しめた。大長編の中で、ミステリーが二段構え(殺人未遂(仮)の謎と、連綿と続いてきた一族の謎)になっているのが、途中で鑑賞者を飽きさせない理由かも。
  3. 汐路ちゃんがかわいい。ずっと見ていられる。自作自演をして、ゆらさんを蔵に閉じ込めた加害者でもあるけど、一連の事件を通して見ると被害者という難しい立場の人。
  4. 帰路についた整の呟きが印象的だった。伝え続けて加害者であり続けた一族と、徹底的に伝えなかったことで被害者のループから外れ、加害者にもならなかった一族。歴史っていうのは一般的に、記録に残したり伝え続けることが善とされると思うんだけど、「鬼」の話は真逆だったんだな。
  5. 一家を惨殺された最初の少女は、復讐を子孫に託しても何ら不思議ではないのに、それだけのことをされたのに、復讐とまではいかずとも子や孫に吐き出さずにはいられなかったはずなのに、それでも伝えなかったんだな。後世の家族を犯罪者にしないために。私には絶対に無理だな、そんな時代の先の先まで読んで口を噤むのは……。せいぜい数年先の未来しか考えられない。
  6. 鬼が怯えていた「逃がした少女が戻ってくるんじゃないか」という妄想は、少女側に立ってみれば「家に戻ったら殺されるかもしれない」恐怖に変換されると思う。なのに鬼の方が怯えていたのか。分からない。
  7. 理紀之介が亡き父からのブレスレットを受け取ったとき、一緒に受け取った言葉になぜか急に泣いてしまった。泣くような映画じゃないのに。年々涙脆くなる。
  8. 多様性の時代ではあるけど、私は誰かに安易に自己肯定感を傷つけられたくないし逆も然りだと思っているけど、「しきたりだから」というだけで、崇高なこととして命を絶てる朝晴の価値観は微塵も理解できないよ。ましてや、その行為の意味を庇護すべき未成年になすりつけるなんて。「ミステリと言う勿れ」に倫理観がぶっ壊れた犯人はほかにもいるけど、朝晴はその筆頭じゃないだろうか。
  9. 祖父たちからの圧力? 洗脳? いや、祖父たちが必死に止めたのに舌を止めようとしなかった彼は、なんなら二人より狂っているように見えた。恐怖心って、時が経てば経つほど緩和されていくものだと思うし、ましてや朝晴にとっては歴史と化すほど昔のことなのに。
  10. 鑑賞を終えたあと、原作を知らないであろうほかの鑑賞者が「あの我路って黒の組織みたいな?」っていう声が聞こえてきたけど、全然違う。我路は犯罪に手を染めた側の人間で、整とは出会った瞬間から道を違えているけど、そのきっかけは復讐だ。テロリストやサイコパスとは違う。むしろ、整に近い価値観を持った人物として描かれていると思う。
  11. 陳腐な言葉だけど、今回主役だった4人には、これからたくさんの幸福が訪れますようにと願ってやまない。誰一人事故や事件で欠けることがありませんように。人生を剥奪されることがありませんように。