読書記録

読んだ本の感想まとめ。

ニャン氏の事件簿

前半は、登場人物の印象も事件の印象も薄い。インパクトは皆無。
『海からの贈り物』あたりから、主人公の背景が紐解かれてきて、キャラクターに色が付いてきた。
ようやく面白くなってきた、と思ったのも束の間、今度は推理を披露するのが主人公だったりメイドだったりニャン氏の通訳者だったりする。落ち着かない。探偵役は物語の中で一貫にしてほしい。

登場人物の中で一番不可解なのは、主人公の元恋人。
自分に婚約者がいるという状況で、なぜわざわざ「あなたのお祖父さんのことを調べたのは私じゃない、両親だ」などと言ったのか? 誤解を解いた先に何を望んでいたのか? 復縁したいわけじゃないなら、ただ自己満足のために告げたとしか思えない。今更自分の株を上げたって仕方ないと思う。
真実を告げて彼女はさぞスッキリしただろうが、主人公は二度目の失恋をしたも同然。
失礼を承知で言うが、彼女の想像力には欠陥があるのでは?

うーん、続きはもういいかな。

ハサミ男

この物語をハッピーエンドとは捉えたくない。警察は事件を半分しか解決していない。
確かに樽宮由紀子を殺害した犯人は暴かれたけど、被疑者死亡で遺族は1ミリも救われない。――そりゃあまあ、警視正殿に勘付かれないように容疑者を調べていた所轄の刑事たちはいい仕事をしたけれど。著者的には、読者は磯部の立場として捜査シーンを読み進めてくれるのが一番理想なんだろう。

何より、前2件の本物のハサミ男の正体には誰一人辿り着けていない。千夏にクッキーを差し出した少女が次の被害者になるかもしれない、と匂わせる終わり方なのが気持ち悪い。

コナンのハンマー男事件を思い出した。マスコミが付けたあだ名が、民衆果ては捜査関係者の中で性別を誤認させる展開。

真犯人Xが真のハサミ男を罵倒するシーンは白けた。
人に殺意を抱いた経験がない人間からすると、五十歩百歩。両者とも狂っている。
捜査関係者の中に真犯人がいるパターンはこれまで何度か読んだことがあるのに、1ミリもその可能性に思い至れなかったよ。
結局、小娘に弄ばれた自分を認めたくなかっただけでは? 自尊心の固まりなのでは? 世も末。

被害者と加害者、それぞれの立場が自分の推しと重なって胃がじくじく痛んだ。
この小説の2人には嫌悪するのに、なぜ推したちのことは狂ったように愛せるのか? と自問自答している。
結局私は自分勝手なんだよ。

2025年、人は「買い物」をしなくなる

久々にワクワクするノンフィクションを読んだ。
Kindle Unlimitedで偶然手に取った本だけど、読んでよかった。
5Gがもたらしてくれる消費の変化を想像すると、心が躍る。

第1章 ショッピング体験の進化で、人々は「買い物」をしなくなる

私が服レンタルサービスを利用しているのも、漫画はすべて電子書籍で買っているのも、日用品をヨドバシドットコムに頼るようになったのも、すべては買い物のプロセスが煩わしいから。すごく納得感がある。
特に「店まで足を運ぶ」「商品を選ぶ」という行為に脳のリソースを割くのが面倒。

第2章 ショッピングはどう発展してきたのか

棚の奪い合い(戦後~バブル)
→棚が家に来た(ネット普及)
→棚が手元に来た(スマートフォン普及)
の変遷がよく分かった。

第3章 リーディングカンパニーたちが目指すもの

日用品や食品の店舗はどんどん無人化されてほしい。
クレーマー客に精神を削り取られる店員さんは0人になってほしい。
コンビニやスーパーでもセルフレジが当たり前にあるけど、周囲に店員さんがいれば操作方法を尋ねる客は出てくるわけで、客側も販売側もわずらわしいじゃん、そういうの。

第4章 さらなる進化、「デジタルシェルフ」へ

ストーリーに惹かれて購入を決断するのは分かる気がする。今持ってる身近なものだと、長財布がそれかなあ。
楽天でランキング上位に入るような商品は、開発プロセスの魅せ方が上手いなあって思う。
何しろ創業ストーリーに惹かれて今勤めている会社に応募を決意したくらいだから、ストーリーに魅力を感じて行動を決断する気持ちにはとても心当たりがある。

そして、4Gと5Gの通信速度にそんなに差があるとは知らなかった。
買い物が日進月歩のカテゴリなのは分かるけど、タイトルの「2025年」は盛りすぎでは? などと思っていた。
でも、5~6年後……あるかもしれない。

個人的には、あらかじめ登録しておいた食材が切れたら自動で購入・支払いしてくれるIoT冷蔵庫が発売されてほしい。
いつも買う食材は固定にしているタイプなので、そうなれば明日の朝の食パン切らしてた、ってこともなくなる。

葉桜の季節に君を想うということ

途中で視点が別人になったり、時間軸が過去へ飛んだり、混乱させられた理由が終盤でやっと分かった。
なるほど、これは確かに上質な叙述ミステリーだ。「補遺」が、読者に伏せられていた事実と小説の描写とがなんら矛盾しないことを示している。

私はいつから、主要登場人物が10~20代の若者だと錯覚していた? 久高愛子は隆一郎の孫娘では? 綾乃は20代前半のギャルじゃなかったの? そして何より、主人公には売春婦で女遊びをするDQNのイメージしかなかったんだけど???
なんで全員高齢者なんだよ(叙述トリックに1ミリも気付けなくて悔しい)。
キヨシだけは現役高校生だったけど、定年後の定時制への入学なのかよ。嘘はつかれてないのに騙された(それが叙述トリックの真髄である)

今では所持しているだけで犯罪になるクスリが、戦時中は国家が強制的に国民にやらせていたっていうのが、叙述トリックの真相と同じくらい衝撃だった。少しググったけど、作中の作り話ではなくて史実、だよね?
ヒロポンなる薬が、日本のめざましい復興の一翼を担った――なんてことを知ると、とても複雑な気持ちになる。
高度経済成長期終焉後に生まれた私の人生は、そんな危険な薬を踏み台にして成り立っているのか、みたいな、罪悪感に似たなにかが湧き上がってくる。
犯罪と正義の定義なんて、時代が違えば180度変わるものなんだ。

人間の腹を切り裂いて内臓を引っ張り出すなんて、狂人以外にできない芸当だと思っていた。
でも真相が明かされてしまえば、酷く冷静で狡猾な人間の仕業だった。

主人公の心に傷を作った自殺者二人は、安さんと江幡京だった。
どこで勘違いしたのか、私は二人のうちの一人は主人公の実兄だと思っていた(実際は出征後の戦死だった)。

「君が人殺しの片棒をかついだからといって、俺は君の人格を全否定するようなことはしないということだ」

もしなにかの間違いであと半世紀くらい生きてしまうとしたら、この言葉を自信を持って言えるババアになりたい。
今はまだ、好き/嫌いと良い/悪いを混同しがちなクソガキだけども……。

蓬莱倶楽部の親玉が、高齢者は日本の穀潰しだって罵っていた。若者の負担ばかり重くなるって。
まあ各種社会保険が負担なのは確かだけど、今の高齢者はこの国の焼け野原を大都会に変え、経済や文化をゼロベースで再構築してくれた人達なので、そう邪険にもできないでしょ。
たとえこの国の労働者全員が、年金受給者に対して「早く死ねばいいのに」という思いを抱いていたとしても、それを執行するする権利がなぜ蓬莱倶楽部にあるんだろう。

最後に、主人公に一つ文句を言ってやりたい。お前、風呂なしボロアパートの庶民かと思ったら、白金台に屋敷を持つ上流国民の元お坊ちゃま、独身貴族じゃねーか!

セカンド・ラブ

イニシエーション・ラブ』と同じく女が男を弄ぶ系の作品だと思いながら読み始めて、主人公の正体に驚かされた。やられた。
冒頭の結婚披露宴のシーンと矛盾するのでは? と思って読み直したけど、矛盾してなかった。それどころか、主人公が実体を持たないことをすでに示唆している。参った。完敗である。
冷静に考えてみれば、こんなに分かりやすい形で謎(春香と美奈子が同一人物であること)を明かしているなら、ミステリーがミステリーとして成り立ってないよな。

結局私には、正明の言うように、春香が死んだ美奈子になりすまして水商売の世界に飛び込んだ理由が分からないよ。正明と先輩の二人を手玉に取りたかったのか? →美奈子が生き残って春香になった説の存在を他の人の感想で知って、得心した。

正明に言いたいのは二つ。
一つは、避妊具をつけるのに手間取って、恋人に成功経験がないことを悟られるのが恥ずかしいなら、最初から避妊具を買って一人で練習すればよかったのでは? という疑問。
そしてもう一つは、二人の女を同時に愛せるほど器用な性格していないことをもっと自覚した方がいい、ということ。

このシリーズ、ラストのどんでん返しは面白いんだけど、女性の性格が悪いから読了後非常にストレスが溜まる。
それに『イニシエーション・ラブ』の続編でもなければ登場人物がリンクしているわけでもなさそうなので、Kindleでシリーズ扱いされている理由が不明瞭だと思う。

魔女学校の一年生―ミルドレッドの魔女学校〈1〉

主人公が生徒たちや先生方の信頼を獲得するまでがスピーディー。
満場一致のハッピーエンドだから、児童書としては分かりやすいか。
冒頭は独りぼっちの劣等生から始まって、一巻ラストで最初の友に出会う、くらいの展開でもよかったかな。

HB先生は、在校中は誰もが疎ましがるけど、卒業後にその教育の本質に気付いて、敬服せずにはいられなくなるタイプの教師と見た。

私は性格が悪いので、優等生のエセルの悪事が明るみになったときは、爽快感に満ち溢れた。
自己顕示欲が強すぎると、足元をすくわれる。
しでかしたこと(しかも過失ではなく故意)の大きさを考えると、停学処分くらいは食らいそうだけど、一巻で消えてしまうキャラクターかもしれないと思うと口惜しい。
主人公と敵対する登場人物は、何度も主人公と衝突する中で価値観を変え、物語終盤では腹心の友になったりする展開が好き。ロマンチックすぎるか?

ネコのトラチャンは人間の言葉を話し出せばもっと面白いのに。

魚服記

結局少女が何を望んでいたのか、うまく読解できなかった。
鮒になった自分に気づくとき、彼女は何を思うのだろう。最後の見開きページは印象に残った。
「魚服」の意味が分からず調べたものの、Googleの画像検索には魚のイラストが描かれたTシャツがズラリ。なんも分からん。