読書記録

読んだ本の感想まとめ。

レプリカだって、恋をする。2

読書中は、これは恋の話だ(ただしヒロインは主人公ではない)とか、弱小文芸部の下克上物語だとか、いろいろ、いろいろ考えたけれど、今はひとつの結論に至っている。
これは、どこまで行っても人間の話だ。人間じゃない存在がどこまでも人間であろうとする話だ。

2巻の冒頭では、ふたりぼっちだった。事件と感情のぶつかり合いと自己開示を経て、三人になるかと思った。でも水泡に帰した。喪失感が強い。
私もリアルに実家の愛犬を亡くしたばかりなので、ペットロス真っ只中の日に読んだら、申し訳ないけれどこの本が精神状態が悪化する要因になっていたかもしれない。

すずみ先輩と望月先輩が両想いだったのは救いだったけれど、でも結末は少しも救いじゃない。でもヒロインを泣かせているのはアキではなくて……。

その近くに奇妙なオブジェがあった。
それは、制服でできていた。

ここの暗喩表現。鳥肌が立った。森リョウという人格の消失を知らせるあらゆる言葉の中で、最も残酷だと思う。これは作者の方への褒め言葉です。この言葉選びができる作者さんを心の底から尊敬する。
言っておくが、電撃文庫発刊だからって舐めて読むと心を叩き潰されるぞ、私。これはバッドエンドだ。

望月先輩は、いつかすずみ先輩の死を受け入れて、越えていくのだろうか。
いや……彼は、彼女の喪失感を演劇のパワーに変換する気がする。活力、ではなくて、心の闇を芸術に叩きつけるという意味で。

すずみ先輩は、複製品を複製品としてではなく一人の人格として扱ってくれたけれど、でも、オリジナルが死んだら複製品も強制的に消滅する。それは絶対的なルール。
学校のほとんどの生徒は、森リョウという人格を知らない。
人間は命が消えたときじゃなくて、周囲の人から忘れ去られたときに本当に死ぬというけれど、自分が自分として死ねなかった人格はどうすればいいのか。森リョウとしての人生は確かにあったのだろうか。彼女のお父さんとお母さんは、リョウ先輩とすずみ先輩の両方を同日同時刻に失ったのか……。

人間。それは、独りで逝くという特権を持っているということ?

これが普通の恋愛小説で、好き同士が死によって引き裂かれるという話なら、「来世では同じ魂を持つ人と、同じ世界線同じ時代同じ国に生を受けて、また出会ってほしい。そして今度こそ、幸せに」という願いをもって自分を慰められる。
でもリョウ先輩とナオちゃんはそういうのなのか? ましてや、すずみ先輩とリョウ先輩はそういう関係性なのか? 感情の持っていく先がない。
私も、リョウ先輩に会えるなら、もう、なんだってよかったのに。

そして、ラストは3巻も出そうな雰囲気。
愛川素直にとって、愛川ナオはあくまでも自分の代替品でしかないようだ。
次巻、愛川ナオの実体としての出番はあるのか不安になってきた。