読書記録

読んだ本の感想まとめ。

フランス革命の女たち〈新版〉 激動の時代を生きた11人の物語

表紙をオスカル様とアンドレが飾っているというだけで、ベルサイユのばらファンにとっては必読書というかね。
池田先生は漫画家としての才能に秀でているのに、歴史評論家としての才もあるんだなあ。

この本の「おわりに」まで読み終えると、ベルサイユのばらの主人公の一人、オスカル様が、男性ではなく「男装の麗人」として描かれたことに深い意義を感じる。
オスカル様は池田先生にとって、女性解放の象徴なのだろうか。
いや、この国においては、それはまだ完遂されていない……。

女装の騎士 エオン・ド・ボーモン

スパイってフランス革命の時代からいたのか。
女装姿には微塵も男性要素が感じられなくて呆然。
容貌が優れていると可能性も広い。

エスプリの女神 ジョフラン夫人

世が世なら、彼女は女性政治家として活躍していたのではないか。
法律が女性の存在を認めていなかった時代が口惜しい。

最後の寵姫 デュ・バリー夫人

フランス貴族社会の恋愛風俗、TL漫画や少女小説の傾向とは180度違っててもはや笑える。
夫を愛したら変わり者、夫に対してやきもちを焼いたら「最下層民の悪趣味」ってどういうことなの……。

美貌の女流画家 ヴィジェ・ルブラン夫人

彼女の夫は、現代ならただのヒモ男。
彼女がアントワネットの肖像画をたくさん描いてくれたおかげで、後世の私たちはアントワネットの息づかいを感じることができるのよね。

ロココの薔薇 マリー・アントワネット

(前略)あなたの兄上のところへ会いに行くように、との判決を下されたのです。

恥ずかしながら、この手紙の存在を初めて知った。背筋が粟立った。
池田先生のアントワネットに対する語り口が終始辛い。作画の華やかさと評価は別に比例しないらしい。
当時のフランス国民の立場で彼女を見れば、アントワネットは糾弾の対象でしかないのか。
以前読んだ「マリー・アントワネットの日記」と比べると、あまりにも(特に裁判前後の)印象が違う。

ジロンド派の女王 ロラン夫人

もともと地頭がいいし、人生の選択を大きく誤らなかったし、女性の人権がなかった時代に男性の陰で上手く立ち回った人だと思う。
それにしても、鉄の鎖で拘束されてから燃え上がった恋とは……。これだけで物語になりそうだ。

情熱の女闘士 テロアーニュ・ド・メリクール

監禁から釈放されたのが不運だったのか、20年も独房生活を余儀なくされたのが不運だったのか……。
気が狂って20年も孤独を強いられるくらいなら、ギロチン台で首を落とされた方がマシではないかと思ってしまった。
比較することは愚かなのだろう。

暗殺の天使 シャルロット・コルデー

仰々しい異名がついているから、殺戮の天使かと思ってしまった。
その場で取り押さえられたなら、最初から逃げるつもりはなかったのか。
死体の2枚の絵、実物はさぞ強烈だろう。
25歳で断頭台に送られたのか。寒気がする。

優しき革命家の妻 リュシル・デムーラン

恋愛小説の大作を読んだかのような余韻がある。
「7年がかりの大恋愛の末に結ばれた2人」と捉えるとロマンティックだし、「良妻賢母型女性で、夫に盲目的な賛美を送る」というところだけ切り取れば、「自分の意思が自分の人生を決める」という戒めにすることもできると思う。
夫が監禁されてからの彼女の行動は、ロベスピエールらにとっては気狂いにしか見えなかっただろう。
でもリュシル本人が断頭台に登ることを恐れていなかったなら、少なくとも彼女の最期は不幸ではなかったと言えるのではないか。

流転の王女 マリー・テレーズ・ド・フランス

「タンプル塔での国王一家の食事風景」が、作中にあるどの絵よりも家族らしく見えるという皮肉。
でも王女にとっては、父母の愛を思う存分浴びられるひと時だったのかも……。

英雄の初恋 デジレ

時代がそうさせたのだろうし、この本で語られている人物全員に言えることだけど、人生がジェットコースターすぎる。
後年の生活が平和でいっそ安心したわ。83歳は大往生だったのかな。