読書記録

読んだ本の感想まとめ。

ベルサイユのゆり -マリー・アントワネットの花籠-

別名・マリーアントワネットのアンソロジー本。「花籠」とは言いえて妙。
マリー・アントワネットの日記』に比べると、文体の派手さという意味では劣るけれど、
マリー・アントワネットの周囲にいた色々な立場の女性(一部男性含む)から見た「マリー・アントワネットの真実」を覗かせてもらった。
彼女たちは彼女たちなりにアントワネットの一側面しか見ていなかったし、アントワネット本人ですら、己のすべての顔を自覚してはいなかったのだと思う。人間誰でもそうか。

ルイ・シャルルの「人たらし」な性格は、確実に母から遺伝したものかと。
デュ・バリー夫人の男を意のままに懐柔する手腕も見事なものだけど、アントワネットは意図せず周囲の人間を虜にさせるんだから、天賦の才と言わざるを得ない。
本人の意思に関わらず愛される才能のある人。それを自覚していなかったことが、フランス革命のトリガーになったと言えなくもない気がする。

デュ・バリー夫人の悪女・売女なイメージは、ベルサイユのばらマリー・アントワネットの日記よりずっと薄かった。
ポリニャック夫人の、王妃には見せなかった一面の方が強烈だったような。

マリー・テレーズの章が一番ボリューミーで、実像に限りなく近い母・マリーアントワネットの姿を語っているように思う。

その人の実像を離れ、過剰に讃えることと過剰に貶めること、どちらも大差ないとは思いませんか?
あの人は生き残った廷臣たちによって二度殺されたのです。

この一節が、本作の中で最も心を抉った。