読書記録

読んだ本の感想まとめ。

むらさきのスカートの女

中盤までは劇的な展開になるわけでもないのに、なぜかむらさきのスカートの女の次の行動が気になってしまって、一気読みした。語り手の言葉には、読者を縛り付ける謎の吸引力がある。

一冊の中で、こんなに印象が様変わりする登場人物も珍しいな、と思った。
長いこと年齢不詳で、勝手に40歳台と思っていたけど、主人公の目には30歳くらいに見えていたのか。
この主人公に「信頼できない語り手」という印象を抱いていたのは、どうやら私だけではないらしい。

むらさきのスカートの女は、本当にむらさきのスカートばかり穿いていたのか?
彼女は今どこにいるのか?
職を転々としている理由は? 今までの職場でも、男性と関係を持つことがあったのか?
結局、ホテルの備品を盗んだ真犯人は誰だったのか?
疑問は尽きない。普段ミステリーを好むからだろうか、消化不良を起こしている。
私は、この物語を充分に楽しむ読解力を持ち合わせていないようだ。

日野さんは所長のストーカーということにされていた(真相は2人にしか分からない)けど、主人公だってむらさきのスカートの女のストーカーだよね……。他にすることはないのか。そんなだからライフラインを止められて家を追い出されちゃうんだよ。
逃亡を全面的に煽ったことといい、むらさきのスカートの女にどうしてそこまで執着するのだろう。
最後にベンチの指定席に座った人間は、主人公だったのか?
解説者の言うように、観察者が「むらさきのスカートの女」に成り代わり、この物語はループするのだろうか。