今、死ぬ夢を見ましたか (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者:辻堂 ゆめ
- 発売日: 2019/03/06
- メディア: 文庫
主人公の死は、半年足掻いても覆らなかった。でももし仮に井瀬が死を回避したラストだったら、興ざめだったと思う。
ただ男女カプおばさんとしては、一番最後に井瀬の脳裏を過ぎった光景は幻ではなく、違えてしまった可能性のひとつだと思いたい。読者が勝手に妄想する分には自由だよね。でも井瀬と紗世ちゃんが一緒になれば、今度は陰で粕谷が泣くんだろうか。
最終章で主人公が人を殴ったり刺したりする原因が明らかになって、比喩ではなく吐き気がした。もちろん暴行それ自体も罪だけど、主人公はやっぱり勧善懲悪を信条とする人間だ。
悪人の定義が分からなくなる。よく勧善懲悪系のドラマなんかで「どれだけ悪人だとしても、その命を奪う権利は誰にもない」って聞くけど、人権を与えてはならない悪人は存在すると思う。
井瀬は結局、殺人犯として生きることはできなかったね。
来世では紗世ちゃんと同じ魂を持つ人と、同じ世界線同じ時代同じ国に生を受けて、また出会ってほしい。そして今度こそ、幸せに。