読書記録

読んだ本の感想まとめ。

望み

望み (角川文庫)

望み (角川文庫)

実は息子は事件とは完全に無関係で、数日後にひょっこり帰ってくる両親とも救われるラストにならんかな?と一縷の望みを持ってたんだけどならなかったわ。真相が明らかになった時、安堵した私は人でなしなのかもしれない。

無償の愛って、命懸けで出産する母親にしか備わらない(そして母親全員が持っているものでもない)概念なのかもしれない。母には子供は「かつて自分の一部だったもの」という意識があるが、これは父親とは共有できない。そして出産を経験していない女性とも共有できない。

私は出産の経験はないので、どちらかというと一登寄りの意見。殺人犯であるより、被害者として既に世を去っていた方がまだ救われる結末だなと思う。仮に私が母親の立場で、息子が人殺しだったとしたら、もう傍で人生の可能性を示してあげることはできないし、世間の糾弾から彼の目を覆い隠すこともできないし、倫理を外れてしまった彼の価値観を正せる自信もないもの。

これからはね、あなた、今までと違う人生を生きていくの。頭をずっと低く低くして、風が当たらないように息をひそめて、人並みのことも全部ほかの人に譲って生きていくの。

これが母親にとって励ましの言葉になるの意味が分からない。初産は、その女性をそれまでの彼女とは決定的に違えてしまうとんでもないものじゃなかろうか。