- 作者:ルイザ・メイ・オルコット,藤田 香
- 発売日: 2010/06/01
- メディア: 文庫
作家をめざして
当時の通貨の価値がどの程度か分からないけど、19歳で創作がまとまったお金になるのはすごい。人生の終わり頃になっても芽が出ず、筆を折る人も多いのに。
原稿を三分の一にちぢめて、ジョーのとくに気に入っている部分をすべてけずれば、出してもいいといってきた。
出版社からのこの提案、スゲー上から目線で腹立つ。それもう別の作品じゃん。時代性かなあ、女が作家(笑)とか思われていたのかも。作家と出版社って対等の関係じゃないの? 作家にとって作品は我が子のようなもので、それをよりいい内容に仕上げる手伝いをするのが編集者だと思うんだけど、現実はそうじゃないの?
お父さまは保守的だなあ。多分三十年眠らせている「書いたもの」は一生日の目を見ないぞ。それに自分の作品って小説に限らず、時間を置けば置くほど未熟さが目についてこの世から消したくなったりするし。
ジョーは最終的に出版社や他の人の意見に従って作品をごっそり変更したらしい。メンタルの硬度がダイヤモンド級で恐れ入った。私なら眠らせるのも嫌だから、出版社の提案を蹴って一言も削らずに自費出版する。こういう思い切りの有無が、成功者と凡人を決定的に分けるのかもしれない……。
ジョーのニューヨークだより
ニューヨークで出会ったベア先生に一直線に惹かれていく過程がいっそ清々しい。一巻ではジョンを気にする姉をあれだけ毛嫌いしていたのに、時間の経過と新しい刺激はこんなにも人を変えるのか。Wikipediaによると、後に結婚する二人。親子ほども年が離れていて、ジョー本人は手紙で「心配しないで」って書いてるけどこういうのは大抵フラグにしかならない。
まあ前話でお母様の言葉によってローリーとのフラグをバッキバキにへし折られた直後に挿絵付きの男性が登場したら、恋愛作品に敏ければ察しはつくわな。
ジョーが例え男女の関係には微塵も興味がなくても、エイミーのようにお金持ちに目がなければ、ローリーもベア先生と対等に渡り合えたかもしれないけど……(正確には金に興味がないわけではなくて、自分の頭で稼いで自分で裕福になってやると野心を燃やしているタイプ)。二人の赤い糸は繋がっていませんでした。誠に遺憾です。
失恋
二人の会話が段々、駄々をこねる子供と諭す母親みたいに見えてきてしまった。最終行から来る喪失感が凄まじい。孫の失恋を冷笑せず、彼には傷を癒やす時間と自由が必要だと、まさに「鉄を熱いうちに打った」おじいさまは慧眼だと思う。
あたらしい恋
ベスの危篤がエイミーに知らされなかったことに納得がいかない。家族は故郷を離れて頑張っている末っ子に水を差したくなかったのかもしれないけど、大切な人の死に目に会えなかった後悔は、何年経っても居座り続けて心を抉るものだ。
おどろきと喜びと
きみに対するぼくの愛は、変わったんだ。エイミーときみが、ぼくの心の中で入れかわった。それは最初からそうなる運命で、自然にそうなったんだと思う。
この言葉で、やっと私の心の傷も癒やされた。はっきり区切りをつけてくれてよかった。新しい愛は、こんなにも人を大人にするものなのか。
やっとローリーとエイミーをお似合いの夫婦だと祝福できるようになったよ。