読書記録

読んだ本の感想まとめ。

若草物語(1) 仲よし四姉妹

純文学を読み始めたつもりだったのに、読み終えていたのは上質な恋愛小説だった。「ローリーのいたずらとジョーのとりなし」「マーチおばさまのお手柄」はツートップの糖度。最終話はおばさまにとっては皮肉すぎて笑う。

感情に身を委ねた末に深層心理がぽろっと溢れるのは現代の恋愛作品としてなら使い古された展開だけど、これは150年以上前に書かれた小説。というか相当数の少女漫画/少女小説の礎がこの作品なのでは。当時の読者達の心は忙しかったに違いない。

ほとんど求婚みたいな台詞を口にしたのに、まったく恋愛対象として見られていないローリーがさすがに不憫である。

ローレンス家の少年

ジョーとローリーの出会いがたまらなく好き。ダンスを踊った時に一目惚れしたとかよりよっぽどロマンチックに感じる。友人の結婚式で「嫌々参加したパーティー壁の花になっていた時、たまたまカーテンの裏でぶつかって……」なんて馴れ初めエピソードを聞かされたら、男女カプおばさんとしては滾りすぎて料理の味なんか分からなくなる。

何よりローリーが、ジョーの繕ったドレスやシミのついた手袋を笑いもしなければ、憐憫の目で見ていないのがいい。それに挿絵も絶妙なタイミングで出てくるんだこれが! 二人は後の夫婦ですか? 夫婦ですよね? 私、信じてる。(後に黒歴史となる一文)

おとなり同士

ジョーとローリーの距離がぐっと近付いた記念すべき話。

ローレンス家の図書室の本の一切は、二人が夫婦になればジョーはいつでも読めるようになるのでは?(妄言1)

てきぱき部屋の片付けをするジョーを見て、ローリーは内心(いいお嫁さんになりそうだな)などと思っていたのでは?(妄言2)

ローリーの「よこしてくださったお薬」=ジョーっていう台詞があまりにも粋。

我慢できなくてWikipediaの登場人物欄を斜め読みしたら、ローリーのところに「ジョーを熱愛するが、最終的にはエイミーを娶る」って書いてあって
ハア?????ってなってる(愚か)

なんでだよ……二人は後の夫婦だって信じちゃったじゃん……。ジョーがローリーを異性として見られなかったのかなあ……(成人してるのに初めて若草物語を読む女)

まあでも1巻序盤で覚悟ができてよかったのかもしれん……2人が後に結ばれると信じて読み進めていたら、ショックで丸1日塞ぎ込んだかも。

ベス、美の宮殿へ

内気なベスが主役。恋愛エピソードじゃないのに展開があまりにもロマンチック。人は予想外にあまりにも大きい歓喜の心に揺さぶられると、頭が上手く回らなくなることがあるのだなあ。

そりゃあ、手作りの部屋履きを贈ってピアノが返ってきたらぶったまげるよね。しかも孫娘の遺品。喜びが過ぎて、ベスもおじいさんも最後は性格が変わってる笑

ジョー、魔王に会う

ジョーの気持ちが分かる。電子機器はもちろん印刷が庶民には扱えない時代、バックアップを取るのは容易ではない。しかも年を跨いで練りに練られた原稿。彼女にとっては、我が子を燃やされたも同然なのだ。『赤ちゃんと僕』亡き母とのツーショット写真に落書きされて弟を引っ叩いた拓也を思い出す。

人を傷つけて、それを楽しんでいるようなところもあるんだと思う。

ジョーはサイコパスではないよ。ちゃんと人の幸せを共に喜び、不幸を共に悲しめる人だよ。

姉妹の両親の馴れ初めが聴きたい。

暗い日々

さらっとキスシーンがあってぎょっとした。外人にとってのキスは挨拶だって言うけど、挨拶のキスと家族間でのキスと恋愛感情からのキス、それぞれの違いはなんだろう。口付ける場所?

ローリーは重病人のベスが心配なのはもちろんだけど、看病疲れで参ってるジョーのことを誰より心配しているように見える。

うちあけ話

ジョンに惹かれているメグと、男女のあれやこれやが自分には遠い世界の話だと思っているジョーの対比がいい。メグの恋が愛に変わる過程を見守っていたいと思うし、ジョーという少女が恋を知る過程を見守っていたいと思う。お母様はさすが先見の明。

女性より男性が年下のカップルなんて考えられない!という懐古的な思想を一切隠す気がなくていっそ清々しい。

ローリーのいたずらとジョーのとりなし

メグがジョンを意識する過程が完全に少女漫画。ローリーはしこたま叱られたけど、二人の橋渡し役も務めたのだ。念の為にWikipediaを覗いたら、後の夫婦だそうでとてもとても安心した(ジョーとローリーの傷の後遺症がまだある)