第一話
体裁だけ見ればほとんど同棲のような、癒着した二人が担任とその生徒になるのって現実ではありえないんだろうけど、まあそこはフィクションなので。ヒロインが赤ちゃんの頃から知っていて、むしろお世話していて、その発達途上の姿に戸惑う兄的ポジションが、タイトルになぞらえて言うなら「エモい」。
昔はここにさらに恋愛感情が加わった作品に目がなかったけど、成人と中学生は完全に事案なので、一欠片の恋愛感情もない男性×揺れ動く気持ちにまだ名前がつけられない女子中学生だと完璧。120点。
身長172cmで体重50kg(以下)は明らかに低体重なので、先生としてそこらへんをちゃんと指導してほしい。あと5kgは欲しい。
第二話
中二の新年度一発目の授業が『吾輩は猫である』とかありえる? 詩『春に』を読んだりするところから始めない? 滑り出しの授業にしては内容が重くない? 漱石は、というかあの時代の作品は語彙が今とまるで違うから、私は辞書を引きながらじゃないと読めないんだけど。読みやすい要素なんて1ミリも感じられない。レベルが高い学校なんだな……。
美優ちゃんはヒロインを神聖視しすぎなきらいがある。彼女は月とクマムシと自分を卑下するけど、可愛い女子に目がない読者からしたら第二話は幸福の具現化でしかない。
ひなたちゃんは男女関係なく高嶺の花で、逆に友達が作りづらくて困ってるんだろうと思う。美優ちゃんの思うような「特別であってほしい」という憧憬が、ヒロインへの重圧と変わって襲いかかる。
第五話
ライトノベルで教師の淫行問題に触れることになるとは思わなかったし、ましてひとつの言論を読むことになるとも思っていなかった。数を減らす努力はできても、皆無にすることはできない。
エラーの集積こそが生命の本質だからだ。
この一文が生物の真理を語っていて好き。最初は適当にあしらうつもりだったのに、結局真面目に答えているあたり苦労人。
第八話
溜めが長い。長過ぎる。美優ちゃんが口を開いたかと思ったら、三年の先輩に視点が飛んじゃった。最初の引き寄せは上手かったけど、いくらなんでも引っ張りすぎ。少しイライラした。
普段ミステリーを読んでいると、暴力沙汰にまでなった喧嘩の原因はよほど小難しいんだろうって勘ぐってしまったけど、何のことはない、実に中学生らしい恋のよもやま話だった。美優ちゃんはヒロインが悪いと言い切ったけど、手が出た以上(それも何度も)、悪の重さとしては拳を振るった側に天秤が傾くと思う。今回は違うけど、仮に跡が残るような傷だったら親が出てくるのもやむなしだし、法的に立場が弱いのは物理的に害を与えた側。
一話で120点とかキャッキャ言ってたのが、悪い方向で浮き彫りになってしまった。ひなたちゃんがあの日一瞬だけ見せた弱さは本当の本当に本物だったのか。恋愛か? 年の差恋愛として発展するのかこれは? 思春期の年上の異性への憧れって、みんな通過するやつだぞ? とも思ったり。結局自分は二人にくっついて欲しいのかそうでもないのか?
いやあの男女カプおばさんとしてはね、ヒロインの片思い期間に一番旨味を感じるけど、とはいえ暴力要素まで入ってくるのはちょっとばかしアクが強いというか。あれ、でも私昔はヒロインが事件に巻き込まれて攫われたり、記憶喪失になる妄想してたな。そっちの方が遥かにアクが強いわ。
でも立場上、達也にはひなたちゃんが成人するまで、あと6年は手を出さないでほしい。って考えると、ひなたちゃんにとっての6年って長すぎてしんどくない? 10代にとっての6年は成人にとっての30年くらいにならない? そうまでしてくっつく価値がこの男にあるのか? って思ってしまう。
言った瞬間のカットがあるのはずるくない? イラストレーターさんはいい仕事をした。
Epilogue
あの夜の公園での会話、ひなたちゃんは聴いてたのか。それで悟ったのか、教師同士の関係が動き出すかもしれない瞬間を。想い人の針がこれっぽっちも自分に向いていないことを。
間接的にディスられてる達也に笑う。
ラストのカットが眼福すぎる。