読書記録

読んだ本の感想まとめ。

三匹のおっさん

三匹のおっさん (文春文庫)

三匹のおっさん (文春文庫)

  • 作者:有川 浩
  • 発売日: 2012/03/09
  • メディア: 文庫
「三人」ではなく「三匹」としているところが、元悪ガキ三人組感が出ていてよい。ズッコケ三人組シリーズを読みたくなる。

若者世代二人の関係も徐々に変化していくので、男女恋愛好きには一粒で二度美味しい。

第一話

ピアノ教室云々の件にはさすがに引いた。外面だけ取り繕う親と、本音を悟っている子。キヨは孫のことを甘ったれだと評するけど、大人でも子供でもないこの世代ってこういう価値観の子はゴロゴロしてるし、素直に育ってる方だと思うけどな。他人の心理に敏感、正義感、コミュニケーションスキルあたり高く評価できる。

還暦を迎えてからファッションに興味を持ったキヨさんに拍手。人は年を取るたびに、新しいものに挑戦するのが億劫になっていくのに。

間接的な加害者と強盗未遂の被害者という間柄の二人が、何事もなかったかのように店長とバイトを続けているのには目が白黒。メンタルが強すぎる。

第二話

今度はノリの愛娘早苗ちゃんが性被害に遭う話。祐希と早苗ちゃんが繋がる話でもある。二人は将来的に付き合って結婚する気しかしない。彼女を助けた祐希は実に勇敢であった。性被害のシーンは文字だけの作品だから読めたのであって、実写だったら絶対に苦痛に耐えられない。性犯罪の全加害者は社会的に死んで欲しい。しかも真犯人の立場が警察官だと? 受精卵から人生やり直せ。

ノリには警察に職質されないようくれぐれも気をつけてほしい。

第三話

旧友(偽)に揺れた登美子さんを、昔だったら嫌ったかもしれないけど、「不安に付け込まれた」という祐希の言葉、今は分かる。長年連れ添っていればそういうこともある。というか、高校生にしてそれを達観している祐希の精神年齢が高すぎて怖い。男女の機微にまだまだ疎い高校生なら、嫌悪を覚えた早苗ちゃんのような反応は無理も無いと思うが。親が頼りないと子の成長は速いのだろうか。

「幽霊が成仏した」ことにした重雄がイケメンすぎて唸った。

一緒の墓ァ入ろうな。

イケメンすぎて泡吹いた。プロポーズか?

第四話

ヒナ虐待の犯人がショッキングだし、事件を持ち込んだ優等生二人がかつて加害者だったこともしんどい。許される機会を与えられないことを、非情だと嘆く資格は彼らにはない。昴&美和&祐希&早苗:犯人の対比だと思っていたけど、最後は昴&美和:祐希&早苗の対比に変容する。キヨさん、貴方の孫は順調に育ってるよ。どうせ許してもらえるっていう驕りは多かれ少なかれ多くの未成年が持っていると思うけど、それが倫理という防衛線を越えた時、そいつはブランドガキになるのだろう。

第五話

嘘だろ。異性ならともかく、同性で性犯罪への配慮ができないって。痴漢やセクハラに遭ったことがないんだろうか。異性に対して一切警戒したこともないんだろうか。昔KYって略語が流行ったけど、真のKYってこういうことだと思った。モデルスカウトを語る男の件も、悪いけど1ミリも同情できない。

展開が少女小説有川浩の真髄ここに極まれり。祐希が富永さんのことを徹底的に嫌っているのが救い。カレカノおめでとうございます。

第六話

悪徳業者が尻尾巻いて退散するシーンは描かれていないので、爽快感は今ひとつ。第三者として詐欺を見ているとなんで騙されるのか不思議なくらいだけど、エセ宗教団体も精神的に孤独な人を狙い撃ちするって聞くし、どれほどの賢人でも心の隙間をつつかれたらもうダメなのだろうな。理想論を言えば悪徳業者への注意喚起をするより、地域に孤独な老人を作らない方が長期的視野で効果が見込めるんだろう。でも今後は一生独身でいる人もますます増えるだろうし、一朝一夕で効果を期待していい問題ではないね。