読書記録

読んだ本の感想まとめ。

サイレント・ヴォイス 〜行動心理捜査官・楯岡絵麻

栗山千明主演のドラマ版から原作小説を知った。

第一話 YESか脳か

犯罪をより重い犯罪で覆い隠そうとした手口。犯人は、誘拐の方が殺人より刑がマシだと思ったんだろうか。
被疑者が別人の名を名乗っていたと知らされたときは、背筋が粟立ったよ。

犯人を完全降伏に追い込むまでの展開は、ドラマの方が奥行きがあって好きかも。
でもドラマ版は一旦は取り調べを終えているんで、ドラマ版の絵麻の方が分析力に劣るってことになっちゃうんだけど……。

ドラマ版とは後輩西野との距離感も違うので、そこも違いを楽しめそうかなと思っている。

小説版では早々に絵麻の過去に触れられているので、そこがもっと先を読みたいと読者を突き動かすキーポイントになっている。

第二話 近くて遠いディスタンス

歯科医って儲かるイメージはあんまりないなあ。都会では歯科医院が乱立しすぎて、儲けが分散しているのでは?

一話と同じ死体誤認トリックではあるものの、自分のために罪を犯したと顧みている分、まだ更生の余地はあるだろうか。彼女から仕事を奪ってしまったと、涙を流すだけの良心が残っているのなら。

でも歩美さんを助けたいなら、福永の方が財力も(おそらくは社会的地位も)ある分、他にいくらでも方法はあったのでは?
時間はかかっても、母子の家族になるという夢は叶えられたのでは?
……と思ったけど、エピローグの絵麻の推理を読んで、冷静になりました。

絵麻の過去をモノローグで小出しにしてくるのがずるい。いつか小平市の事件が、現在で起こった事件と繋がる日が来るのだろうか。

西野は自ら無自覚に立てたフラグを片っ端からへし折るのをやめろ。

第三話 私はなんでも知っている

CECIL McBEE、去年109から撤退するってニュースになったよね。もはや懐かしい。私の高校時代は全盛期のお尻くらいか? 
ギャル御用達ブランドって言われてたけど、女子高生ならひとつは持っていたイメージすらある。
確かに、30前後の女性には不釣り合いだわな……。

コールドリーディング。確かXXXHOLiCで知った単語。低レベルの自称占い師の常套手段だって。

占い師と信者がマインドコントロールし合うなんて、正気に戻った(アイデンティティを失った)手嶋はこれからまともに生きていけるのだろうか。

第四話 名優は誰だ

キーアイテムがドラマではレディースの時計だった一方で、原作はティファニーのオープンハート。有名になりすぎてチープなイメージすらあるけど、最安値のネックレスでも25,000円はする。
女優の真理はともかく、中学生には不釣り合いじゃないかと思ってしまった。芸能人の家族なら普通なのかな。

真犯人を庇うわけじゃないけど、今回の被害者には同情の余地がまるでない。
無意識に演技ができる天性の才能があるなら、俳優より結婚詐欺師とかの方が向いていたのでは?

自分より低い立場の人間の身長を低く見積もりがちって本当か? どうも疑わしい気がする。
でも、ソースを登場人物に事細かに説明させたら不自然だよなあ……。

「整形を繰り返したせいで顔面の筋肉が制御できなくなり、マイクロジェスチャーが現れなくなっていた」
この設定はドラマでも使ってほしかったし、単なる説明だけで終わらせないでほしかった。

15年前の先生の事件、絵麻の懺悔がいよいよ表に出てきて息苦しい。
犯人と対面し、言葉を交わしていながら気付けなかったなんて、100億回後悔したって足りない。

第五話 綺麗な薔薇は棘だらけ

西野には悪いけど、自称「病気の父親を看病しながら、苦学して大学院に通っている女の子」はやめとけと私も言いたい。
看病と音楽の勉強や練習で多忙にしているはずの苦学生が、なんで参加費の高い、男側の地位や収入が限定された婚活パーティーに参加できる時間的&金銭的余裕があるのさ。
いやその女性の悪口を言いたいんじゃないよ。男を社会的地位や金で選ぶのも一つのパートナーの選び方だと思うし、それで成立している夫婦もいると思うよ。
でも、西野みたいな情緒が豊かで嘘がつけない男とは、相性最悪のタイプだよ……。
でも3つのFが発動した人間って、何を言っても話聞かね~~~。
大体人を信じて生きていきたいなら、疑うのが仕事の刑事とは性質が真逆では? 今からでもカウンセラーとかを目指した方が幸せになれるのでは???

抗うつ薬大脳辺縁系の反射が鈍くなるんだ。覚えておこう。何しろ私自身もうつ病患者なので。

地図を広げたシーンから、第一話の展開と被せつつも、絵麻自身の感情は明らかに異なっているのがニクイ。こういうの好き。

容疑者とそのかかりつけ医が想像以上にシリアルキラーだった。
私も抗うつ薬飲んでるからちょっと親近感を抱いてしまったけど、一生刑務所から出さないでほしい。
こんな特殊な人間のせいで、うつ病患者や精神科医が犯罪者予備軍と糾弾されたらたまったもんじゃない。

絵麻のトラウマの事件が急展開。
彼女は時効だと言うけど、仮に加害者の罪が強姦致死罪だとしたら、2010年に時効は30年に延びているが?
この本の出版は2012年。法改正が適用されていない世界線なのだろうか?

ここまで監禁され殺人犯に仕立てられかけた西野の心配はなし。
だって職業詐称や異性を見る目がないせいで、正直自業自得な側面も
絵麻に助けられてよかったね。これからは別の女にフラフラすんなよ! 一途でいろよ!