- 作者:矢崎存美
- 発売日: 2017/10/12
- メディア: 文庫
一話「猫だけが知っている」
自分もペット不可物件の住人だけど、こうして小説を読むことでペット飼育欲を消化できる自分はコスパがいいのかもしれない。人間視点と猫視点が交互に来るのが面白い。猫は喋らないと人間が勝手に思っているだけで、単に人間に猫語を理解できる知力がないだけなのかもしれない。猫同士で人間への憐憫を語り合っていたらいいと思う。
二話「かぎしっぽの幸せ」
受験戦争の被害者と野良猫を巡る物語。一番円満な形に収まってよかった。飼い主=男の子だった時はちょっと泣きそうになった。何者なんだ、ミケさん。
五話「猫運のない女」
猫好きな研一が一度は「飼わない」と言った理由、何か動物を飼った経験のある人は種明かしの前に察しがつくと思う。猫の方は徐々に自分の命が終わっていくのを受け入れていて、嘆いたりいつまでもひきずってしまうのは人間の方なんだろうな。その子を送る勇気を培っておくことも、飼い主に必要な要素のひとつだ。