読書記録

読んだ本の感想まとめ。

私に似ていない彼女

私に似ていない彼女

私に似ていない彼女

滅亡しない日

続いていく世界で、数時間前まで親友だった女の子が言う。あたしたちの友情は、世界に何も影響しない。

自分の中にはない感情を知りたいところまでは理解できるけど、その相手にあえて親友の彼氏を選んだ意味がさっぱり分からないから主人公に同情はできないが、こういう方向性の思考は嫌いじゃない。

非共有

学生時代はある程度愚痴を共有できる。でも自分で稼ぐようになったら、趣味がまるで違うとか価値観に相違があるとかそういうことじゃなくて、悲しみ苦しみを共有できない人と疎遠になっていくのかもしれない。

切れなかったもの

姉妹の平凡な二人暮らしが描かれていると思ったら、唐突に殺人現場の回想に切り替わったので呆然とした。このタイトルが示すものって死体のこと?! 二人の関係性かと思ってた。妹は埋める時に慣れたふうにしていた姉を不思議がっているけど、10年以上心の安寧を保ち続けながら平々凡々に暮らしている本人もおよそ普通とは言えない。普通は発覚を恐れて隠れっぱなしの人生に疲弊するんじゃない? 私には殺人の経験はないので知らんけど。

お茶の時間

主人公が寛大すぎる。自分が逃亡中の犯罪者の骨休め場所にされたとしたら、自分も警察に事情を聞かれたり、最悪共犯と疑われる可能性を考えてしまって茶を淹れるどころではない。しかしその逃亡犯のアドバイスが店に利益をもたらしたのは事実なわけで、複雑な心境。

あたしは恋をしない

誰かの理想像を自分の中で勝手に作り上げて、現実と相違が起きたからって不貞腐れたり距離を置いてしまうことってある。ヒロインは十歳にしては相当達観している方。大人の言葉を解釈するのが早いし上手い。頭の回転も速いんだと思う。「男子ってみんな馬鹿」は多分小学生女子全員が一度は痛感している。もう5年くらい待ってあげて。

20年後くらいに吉井を伴侶に選ぶヒロインが見えた気がする。たぶん吉井は、少なくとも彼女に友愛は抱いていると思う。

皺のついたスカート

好きを仕事にするのは本当に難しい。大抵は学んでいる最中で自分の才能のなさに気付いて方向転換するか、働き出したあと数年で過労で倒れるか、好きが義務になって嫌いになってついには畏怖の対象にすらなるか、のどれかに収束すると思う。十代の好きを好きのまま仕事にして一生食べていけるのは一握り。だから好きを一生持続させられるのは才能だ。小説家や音楽家なんてその筆頭だと思う。でも十代はその才能が自分にはあるって無意識に信じているんだよね。

母娘ものには弱いので、号泣する話ではないはずなのに少し涙が出た。母は母である前に一人の人間で、一人の子供でもあるということを、離れたり喪ってからようやく気付く。主人公も私も、笑っちゃうほど愚かだ。

十代の自分もずっと一緒に生きていきたい。

このフレーズが一番好き。どれほど愚かで消したい過去でも、あの頃の自分が今の自分の骨肉になっていることは確かなのだから。