初夏 ショコラ
2通りの陰湿ないじめが描かれている。容姿や能力の低さを嘲笑するいじめは悲しいことによく聞くが、優秀な人間を悪目立ちさせるいじめもあるとは知らなかった。「吹きこぼれ」耳障りな言葉だ。
夏 タイミング
初めて毛利さんの内面に深く切り込んだ作品。人間の恐れや怯えに触れる話は心がじくじくと痛むけれど、それでも読むことをやめられないのは、その辛い過去や負の感情も、そのキャラクターを形作ってきた分子だからだろう。私は彼の価値観を、一滴も取り零さず味わいたいのだろう。
サブタイトルがこれまでは物語を食に関係するものに例えていたのに、この話だけいい意味で浮いている。作者としても特に力を入れて書いた話なのだと思う。
ここが佐々目と毛利さんの関係の革命。転換点。毛利さんが自分の一番弱い部分を曝け出すのはこれが初めてだ。
初秋 メニュー
マナーを守るのは強さだ。自分を律し、他人を思いやる強さだ。生きる姿勢だ。
こんな考え方をしたことも、意見を見かけたこともなかったので電撃が走った。大人として、大人だからこそ肝に銘じたい。
ランチルームでの真耶が誰よりも格好いい。「誰に見られても恥ずかしくない」自分を目指したんだなあ。
そして佐々目も、「大量調理に慣れている」というスキルを軸に着実に前に進み始めて、なんだかこっちまで誇らしくなる。毛利さんのツンぶりに母性愛すら湧いた気がする。
そのコットンパンツの裾からピンク色のソックスがちらりと覗いた。
この最後の文何。作者は天才が過ぎる。