- 作者:奥田 英朗
- 発売日: 2006/03/10
- メディア: 文庫
イン・ザ・プール
運動が大っ嫌いな人間からすると、依存対象が水泳なら健康にいいしコスパもいいしそのままでいいと思ったけど、さすがに軽犯罪に走らせたとなると考えものだわね。趣味って度が過ぎるとシャブになるよね。でもやっぱり羨ましいかな、生きてるって実感を持てる瞬間があるのは。
勃ちっぱなし
男に生理痛のしんどさが一生分からないのと同じように、女には一生分からない勃起のしんどさが延々綴られている話。サブタイトルを見ると笑うけど全然笑い事じゃない。会社とかで知られたら社会的に死ぬやつ。
最終的に症状が収まったのはよかったけど、そのきっかけは元妻への罵倒であってほしかった。今からでも慰謝料請求できないの? 怒り方が下手だと、人生しんどいよ。
コンパニオン
伊良部が広美の性格を見越してナルシストと変態を演じていたんだとしたら見上げた根性だけど、演技か素か、はたしてどちらが正解だろう。でも注射フェチは素だと思う。
自分の美貌を自己肯定感の主軸にすると、どう足掻いても美貌が手に入らない年齢になった時精神が死ぬからやめた方がいい、というのがこの話の教訓である。
フレンズ
独りを恐れる少年と、ソロを楽しむ医師とが対照的に見えた。10代にとっての交遊関係は存在証明、という例えが秀逸。輪から弾かれることをこの世の終わりみたいに捉えている。
大人になるっていうのは、その呪縛から解放されて少しずつ独りが平気になっていくこと、なのかもしれない。閻魔大王の御前に友達と手を繋いでいくわけにはいかないしね。人間どうせ最期は独りなのだ。その孤独を、生きている間は友人や恋人や伴侶との関係で誤魔化しているに過ぎないのだ。
いてもたっても
安心と引き換えに文明を放棄した人間の物語。そこまでなら自己責任だけど、赤の他人の生活にまで干渉するのは迷惑。心配も度が過ぎると加害になると知れたのは発見だった。
心配をかける人間がいて、頼まれてもいないのに心配をしすぎる人間がいて、やっと世の中の秩序は保たれている。後者は腹立たしいことこの上ないだろうが、世の真理である。