読書記録

読んだ本の感想まとめ。

水やりはいつも深夜だけど

水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)

水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)

  • 作者:窪 美澄
  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: 文庫

ちらめくポーチュラカ

子供を産んだ途端、女性は周囲に「○○くん/ちゃんのママ」としか認識されなくなるらしい。母親ではなかった頃には満たせていた承認欲求をブログに求めたのは賢明な選択だと思ったのだけど、裏目に出たか。女社会はどの年代になってもしんどい。

サボテンの咆哮

子供が成人した途端熟年離婚する二人が見えた。子供が生まれたことをきっかけにズレ始める夫婦っている。これノンフィクションじゃないの? 産後鬱といい義両親との同居といい、やっぱり現実の結婚なんてろくなもんじゃねえという敵愾心だけが膨らんだ。

ゲンノショウコ

風花ちゃんが「普通の子」と「普通ではないと決めつけられた子」のつなぎ役として書かれているのが救い。もし就学したら弾けて消える泡沫だとしても、一日でも長くその泡が形を保っていられますようにと願う。

砂のないテラリウム

嫁の女から母親への変化を受け入れられず、なんで俺を構ってくれないんだと駄々をこねる旦那の言い訳集。精神年齢が幼児。いい大人なんだから、人恋しさぐらい己で始末つけろや。ちんこもげろクソ男。奥さんを泣かせたことを償え。一生をかけて。

かそけきサンカヨウ

月並みな感想だけど、主人公にとっての「父の妻」が「お母さん」へと変わっていくグラデーションが美しい。ひなたちゃんが姉と同じ年齢になった頃の物語も読んでみたいと思った。

これまでずっと伴侶を持つ成人が語り手だったので、途中まで同じつもりで読み進めていたが、まだ高校生であることに驚いた。年齢の割に思考が卓越している。というより、環境のせいでそうならざるを得なかったのか。

陸君はどう考えても未来の夫。

ノーチェ・ブエナのポインセチア

そうか、家族って、みんなでそう決めないとなれないのか。

私も目から鱗が落ちた。一緒に住んでいれば家族と呼んでいいと思っていた。我が家ではたぶん、母だけが普通の家族を目指して奮闘していた。私はその努力に気付きもしなかった。

自分はいつでも誰かに気遣われなくちゃいけない存在になってしまったようで。

分かる。憐憫は場合によっては苦痛になり得る。

なんだかんだでお互い想い合っている両親が羨ましくて羨ましくて泣きそうになった。大人が思っている以上に子供は周囲の大人の心の動きに敏感で、思春期ならその影響はより顕著だ。「サボテンの咆哮」「砂のないテラリウム」の子供視点も読んでみたいと思った。絶対色々察している。