読書記録

読んだ本の感想まとめ。

なぜ日本人は、一瞬でおつりの計算ができるのか

どんな教育方針でも、一長一短ある。小学4年生相当で人生の方向性を決められてしまう傾向にあるドイツの小学生も、一斉の就職を余儀なくされ、4年のうち1年近くを就職活動に捧げている日本の大学生も、そこだけ切り取って良くない教育だと糾弾することは誰にでもできる。子供の個性が十人十色である以上、万人に通用する完璧な教育など存在しない。

私は日本の画一的な教育、子供の能力を均し出る杭を打つ教育方針、得手不得手が激しい=落ちこぼれになりがちな教育環境に疑問を覚えている人間だが、著者の言う通り、義務教育の最低ラインを底上げするやり方が、この国の平和と秩序を作り出しているという解釈もできよう。詰め込み教育、画一的な指導=悪と定義するのは少々短絡的なようだ。不測の事態が起こらないように色々詰め込む日本と、不測の事態への対応力を身に着けさせるドイツ、教育のベクトルが180度違うのに単純に比較するのも野暮である。

しかしこの「素直」な人間を育てる教育が、いざ社会に出てみたら完全に裏目に出る場合も往々にしてあるわけで(ソースは私である)。日本の画一的な教育とドイツの資格重視型の教育、どちらが善か悪かは、子供が100人いれば100通りの答えがあるわけだが、それでもやはり不揃いや突出を嫌う教育は極端すぎやしないかと思うのだ。特に発達障害グレーゾーンの子供――能力のばらつきが激しい子供の学校内での生き辛さは、最近やっと私達大人の目に留まるようになったのではないだろうか。