読書記録

読んだ本の感想まとめ。

浜村渚の計算ノート 3さつめ 水色コンパスと恋する幾何学

クレタ島・嘘つき迷宮

パラドックス。2さつめのn進法やルービックキューブよりは抵抗が薄くて、もちろん登場人物達より早く解けるわけがないのだが、納得はできた。作中にもあるように、例えばヒロインとテロリストが生徒と塾講師として出会っていたらきっとかけがえのない関係になっただろうことが悔やまれる。しかし二人が警察の協力者と犯罪者という形で出会ったのは必然だったのだろう。

総務部衣装課って現実にもあるんだろうか? 警察官に洗濯とアイロンをしてもらうヒロイン、強い。

アイシテルの正弦

数学で愛を語り合うことのできる恋人たちは、世界で一番ロマンチック

この話の本質はこの一文に集約されている。数学を用いてのプロポーズの魅力は、数学が好きじゃなきゃ理解できない。

あれだね、未来予想図Ⅱの歌詞を思い出すね。ブレーキランプ5回点滅、二人にしか分からないアイシテルのサイン。→後書きを読んで納得。あの歌詞のオマージュだったのか。

ラストの好きな人のくだりは、僕×渚ちゃんフラグかと思って焦った。よかった違うよね。成人(しかも警察官)と女子中学生の恋愛は公序良俗違反なのでやめようね。

プラトン立体城」殺人事件

メリーゴーラウンドなのに、動くのは壁。ミステリー的にはそこそこ奇想天外なトリックだけど、数学的には筋の通ったものらしい。

この話は数学の問題以上のものではなかった、という考えには納得しかねる。私は真犯人は誰で、動機や背景は何で、この殺人の必然性は何で、というところにミステリーの醍醐味を見出しているので。やっぱり数学好きは私とは180度違う価値観を持っているらしい。

オバちゃんの正体とその匂わせ方にピリリと皮肉が効いていて、そこは好き。

武田斐三郎の街で

全国模試で何度もトップ10入りを果たし、国最高峰の大学に現役合格しても尚、承認欲求というのは満たされないのか。いや、秀才であればあるほど満たされないのかもしれない。平凡に生きるには凡庸が一番である。

本来敵側の人間が一時的に共同戦線を張る展開には胸が踊った。

解説を読んで、真に数学が好きな人はこのシリーズをこういうふうに読むのかと呆けた。解法は見当すらつかないので立ち止まって計算してみるなんてできないし、会話の随所に散りばめられたなんちゃらの定理や偉大な数学者の名前も「聞いたことはある」程度でしかないので、何も感動できない。このシリーズの醍醐味の99%を取りこぼしている気がする。次の巻を読むか迷いが生じた。