読書記録

読んだ本の感想まとめ。

さがしもの

さがしもの(新潮文庫)

さがしもの(新潮文庫)

旅する本

人生の歴史が深くなるたびに、本は色を変える。読むたびに新たな気付きがある。小学生の自分と成人した自分とでは物語の解釈がまるで違うのはもちろん、たったひと月空けただけでもまるで違う話になったりする。だから読書はやめられないのだ。逝く瞬間まで本を読めていたら本望である。

だれか

旅の途中で愛読書を置いてきた男は、全部主人公の妄想……と言ったらそれまでだけど、愛読書をもう一人の自分と捉える解釈は好き。もはや恋人ではなくなった人=夫になったと私は考えた。その方がハッピーエンドだ。

彼と私の本棚

男女の別れ話だけど、意外にも読後感は爽やか。誰かを好きになって別れることを、

すでに自分の一部になったものを引っぺがし、永遠に失うような

と例えているのがたまらなく好き。常にこういう解釈で恋愛作品に触れたい。

引き出しの奥

貞操観念ゆるゆるなヒロインが、男の子と手を繋いだだけで照れまくる姿が可愛かった(そこ?

ミツザワ書店

開くだけでどこへでも連れて行ってくれる

本は世界への扉

わ、わかる! 物語の中にいる間は、自分が現実から乖離して、本の世界のモブになっている。透明人間にでもなって、語り手の背後に延々張り付いている感じ。没入感がたまらなく好きなのだ。

あとおばあさんは、活字中毒が過ぎて、商品ラベルの注意書きとか家電の説明書とかも熟読するタイプだったと見た。

お孫さんの夢はいわば個人図書館かな。読書家にとっては桃源郷だわ。

主人公は小説家になるべくして生まれてきたんだろう。盗んでまで読んだ本に価値観を変えられ、処女作が新人賞受賞とは。生涯で赤川次郎並に著書を生み出す作家になるといい。

さがしもの

できごとより考えのほうがこわい。それで、できるだけ考えないようにする。目先のことをひとつずつ片づけていくようにする。そうすると、いつのまにかできごとは終わり、去って、記憶の底に沈殿している

うつ病にならないコツだなと身につまされた。

あとがきエッセイ

本の贈り物。本好きにとっては至上である。就学前に蜜月を経験し、本であれば親になんでも買ってもらえたなんて、贅沢が過ぎるぞ(羨ましい)。

つまらないと決めつけない作者の価値観、私も見習わなければと思った。登場人物がクソすぎて辛辣な感想を書いた本が過去にいくつもあるけれど、それは自分の好みが狭小だっただけで、物語自体の価値が低かったわけでは決してない。同じ本を読んで本を読む喜びを知った人も、世界の何処かにいたはずなのだ。好みじゃないと言うのはともかく、つまらないと言うのは本に対して失礼。とても共感した。

カルチャーショック、とても分かる。ベストセラー本は意外と読んだことがないし、Twitterで本好きの人が話題にしている本の作者なんて一人も聞いたことがない。読書家を名乗るにはあまりにも視野が狭い。でも私も開き直って、呼ばれた本にだけ手を伸ばすようにしている。あらすじを読んで第六感が鋭く反応する本は、大抵私に豊かな読書時間を贈ってくれる。

解説

人間は本を読むために生まれてきた動物

本を読まない人が耳にしたら「主語がでかい」と反発しそうなキャッチコピーであるがしかし、私は本を読むので、この言葉が大好きだ。