特に希美が家にお呼ばれしたあたりから、一気読みしてしまった。おかげで寝不足です。
こちらは失恋前提かつ、ヒーローの片想いの相手が前半で名指しされる分、シリアス度が強い印象。
中高生らしい言葉のつたなさ、思考の言語化の不足、報連相の稚拙さ……みたいなところが多重債務みたいに重なった結果起こったすれ違いかな、と。いずれにしろ片想い段階のすれ違いはおいしい。
お前が、"どっちでもいい”とか"なんでもいい”とか"わからない”っていう答えを書けば、相手にはそれしかわかんねえんだよ。そこに行き着くまでを説明しねーと、こいつは適当に答えてるとか、なにも考えてねえって思うんだよ。だから、数学では、途中式を書かなくちゃ、答えが合ってても丸にはならねえ。
瀬戸山のこの言語化は素晴らしかったと思う。高校生でこれが理解できているのなら、仕事でもコミュニケーションではそうそう苦労しないのでは……羨ましい。
数学の途中式って、思考の過程を表現する練習の一環だったのか……(遠い目)
「(前略)ほら、お昼にデスメタルかかったし」
「ああ……うん、家のCD、ひっくり返して探したんだよ」
「……やっぱり……うん、やっぱりいいよなー、デスメタル」
希美は周囲の人間の機微に聡いのに、どうして瀬戸山の言葉の間に気づかなかったのかしら。どんなに推理力が欠落した読者(私)でも、ここで瀬戸山の本意に気づくぞ。やっぱり恋は洞察力を鈍らせるのか。
ひとつ、嘘をつく。
そしたら、その嘘を誤魔化すためにもうひとつ、嘘をつく。
その繰り返しで、どんどん嘘が重くなってくる。流されるまま、嘘をつき続けて、自分で立ち止まることができない。
わたしはどこまで行ってしまうのだろう。どこにたどり着いてしまうのだろう。
そのうち、嘘の重みで、潰れてしまうかもしれない。
分かるなア……。恋愛に限らないよね。
嘘、誤魔化し、脚色と無縁で生きられる人はたぶんいないけど、でも自分で管理できない嘘はいつか自分を押し潰してしまう。心を壊してしまう。
完全に関係を破壊してしまう前に「これ以上、嘘に嘘を重ねたくない」と決意できた希美は強いと思う。
もー無理、お前に合わせてらんねえ。付き合いきれねえ。なに勝手におわらせてんだよ! なんのために、お前に言わせるようにしたと思ってんだ!
私は基本的に女の子の味方をしがちなので、さも希美に100%非があるような言葉選びが気に入らないのだけど、ここは物語の山場でもある。
「お前、誰?」。まあ、とどのつまりこの聞き方しかないよね、とも思う。
お前、俺が気付いてねえと、本気で思ってんのか! とっくに気付いてんだよ。っていうか、お前、嘘が下手くそなんだよ。ごっちゃごちゃじゃねえか。気付かないフリしてたんだよ、バーカ!
なんで片想いの相手にバカとか言うの? バカって言った方もバカだが?
俺が、お前のこと好きだって、なんで気付かねえんだよ!
言わないからですけど……(マジレス)
あなたコミュニケーションについて希美にご高説を垂れていたのに、過程どころか結論すら伝えていないじゃないの。