- 二宮和也が主演していたSF映画の原作小説。長いこと積ん読していたけど、やっと読了できた。
- 個人的には二部構成の感覚。ベンとタングが長旅を終えて家に帰ってくるまで(タングがベンの人生に必要になるまで)が一部、みんながタングを大好きになるまでが二部。
- 一人の女性の前の夫と現恋人の関係がコブラとマングースじゃなく、表向き無難な関係を保とうとするのが外国的だなと感じた。いや、これは私の偏見なのかもしれないが……。
- 2023年はChatGPTやAI生成イラストなど、私自身にとっても人工知能がとても身近になった年だった。そういう意味で、初読よりも自分事としてこの物語に向き合えたと思う。
- インプットした情報を蓄積して学習するシステム=AIはもう現実にも浸透し始めているけど、感情を持ち、欲を訴え、自ら善悪を判断する“ロボット”は、AIとは性質が異なる存在だ。まだ時代は追いついていない。
- AIは、人間が楽をするためにこの先も発展し続けるだろう。“ロボット”は、この先何が目的で生み出されるんだろう。もしタングのように感情を持ち、製作者が意図した以上の思考をする存在なら、人の孤独に寄りそったり愛されたりすることが目的であればいいなと思う。少なくとも、人間の都合のためだけに使い捨てられることがないといいなと思う。
両親はもういないし、エイミーもいない。その事実がぼくの人生に穴をあけなかったふりをするのは、もうやめよう。
僕自身がいまだ僕という男をわからずにいるのに、二度目はうまくいくなんて言い切れるはずがない。
ベンがタングとの長旅で一皮も二皮も剝けたことを象徴する文。いったい彼は精神年齢を何歳分跳ね上げたんだ。
ある意味では、タングの多感で繊細な心は、ボリンジャーの心にそれが欠落していることを浮き彫りにします。
本作の究極のネタバレだと思う。