読書記録

読んだ本の感想まとめ。

涼宮ハルヒの消失

面白すぎて半日足らずで一気読み。普段なら遅読家ゆえ一冊読み終えるのに4~5日はかけるので、自分的にはかなり異例。
何しろ全ページ全シーン全文字が余すところなく面白いんだもの。退屈な文がひとつもない。そんなことある? ある!!!
やっぱり10代の頃触れて面白かった作品は、10年経っても色褪せない。

キョンが非日常を選択したことで、彼は傍観者ではなく非日常の当事者になった。彼にとって高校生活の意味が決定的に違えたのはこの時からだよね。

そんな非日常な学園生活を、お前は楽しいと思わなかったのか?

キョンのこのモノローグどちゃくそ好き。消失編を一文で説明せよと言われたら私ならこれを選ぶね。

でも、キョンはあっちの世界を否定したけど、私は甲乙つけ難い。何の力も持たないSOS団がわいがや青春するのも、それはそれで面白い。
ハルヒシリーズのファンとしては次は暴走を読むべきなんだろうけど、個人的には次は長門有希ちゃんの消失に脱線したいところ。

私は退屈までは長門有希というキャラクターは推しでもなんでもなかったんだけど、消失をアニメで見て彼女の魅力に「堕ちた」のを思い出した。本編最後のセリフとかもう反則。長門有希のターニングポイントは間違いなくこの巻だと思ってる。

世界が改変された原因が、ヒューマノイド・インターフェース――としては本来あり得ない、人間的なものだったことに強烈に惹かれる。長門有希のエラーの正体にキョンが気付いた時、私はキョン×有希のフラグが立ったのかと思ったほどである。憂鬱からキョン×ハルヒフラグが立ちまくっているにもかかわらず、だ。

アンドロイドやロボットの類が感情や心を発生させる事象については、世界のあらゆるフィクションで幾度となくテーマにされているけれど、永遠に答えは出ない。人間と機械の関係性によって変わると思う。人間が機械を、生活の効率化のために使役することにのみ必要とするのだとしたら、予想外の動作を起こす不確定要素などエラーやバグの元になる邪魔な存在だ。
一方で人間が機械を人生のパートナーや家族として見なすのだとしたら、むしろ不確定要素は多様性の種になる。彼らが人間にとってかけがえのない存在、ゆくゆくは生きがいになる可能性を秘めている。

後者の観点で考えると、私は今回長門有希がした行為を悲劇だとは思わない。キョン長門有希から委ねられた選択で間接的に長門有希の心が望んだ世界を否定した。けれど、世界が再度改変された後、病室のシーンで情報統合思念体にブチ切れたことで、長門有希の心自体は100%肯定しているのが見て取れる。そのことに深く安堵する。
選択権を唯一キョンに与えたのは、彼女なりの優しさだと思う。

そして私はどちらかといえば、涼宮ハルヒを手懐けられるのはキョンだけだと充分分かっているのに、もし長門有希がまた強く感情を発露させて、もし人間を恋い慕うことがあるのだとすれば、その相手はキョンだったらいいと思ってしまうのである。