読書記録

読んだ本の感想まとめ。

火の鳥 エデンの花

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  1. 原作は「火の鳥 望郷編」。小学生時代に図書室で読んだんだったか、完全に初見か思い出せない。でも初見と言って差し支えない程度には新鮮な気持ち。
    • そもそも既読だったところで、火の鳥の世界観や手塚治虫からのメッセージ性は当時の私には微塵も理解できまい。今だってそうなのだから。
  2. 2時間弱の間にひとつの文明が創造され、滅亡したので(そしてそれは破壊と言って差し支えないような暴力的なものだった)、創造神にでもなったような気分だ。あまりにも驕った感想だけれど。
    • 幾星霜の間、滅亡と再生を繰り返し見てきている火の鳥はこんな心境なのだろうか。いや、こんな感想すら思い上がりかもしれない。原作の火の鳥はあくまで傍観者で、こんなにひとつの文明に加担するイメージはない。この映画はどこまで原作に沿っているのだろう。
  3. ロミは謎の治療によって快復&若返った=つまりおよそ40年分肉体と寿命を巻き戻したということ?
  4. コムは最後に逝ってしまったけれど、手塚治虫作品だけあってそこは覆らなかったけれど、ロミがエデンに降り立つのを待ってから旅立ったんだね。頭上の触角が花になる=命が尽きようとしている、というシーンが矛盾を孕んでいて印象的だった。
  5. カインの誕生から成長、絶望という過程を見ていると、生物は個体が一つだけでは子孫は生まれないし、だから文明も築かれないと思い知らされる。
  6. 絶望の淵にいるカインの前に現れた、ロミと同じ姿をした個体。あれは人間に擬態した火の鳥ではなく、コムの先祖の片割れである新生物、ズダーバンが言うところのムーピーだったのよね? 最後にロミの前に現れたジョージもそうよね?
  7. その人が望む人間と同じ姿をした別の生命体。それは外野から見るととても救いとは思えないが、本人が救われているならいいのだろうか。
  8. 牧村の「もうずっと前から、人類の存在が大間違いなんだ」という主旨の言葉(あー、感動したのにもううろ覚え)。私もそう思う。地球含め生物が生息できるあらゆる星は人間のために存在しているわけではないし、人間は高位な生物では決してない。地球環境保全に最もいいのは、人間が滅亡することなのは間違いないと思う。
  9. 現在の地球はディストピアを絵に描いたような世界観だった。一部の特権階級の人たちは、マスクなしでは2分と持たないような環境のどこに執着しているのか分からない。
  10. ロミの故郷が消滅するあの瞬間は、太平洋戦争で使われた原子爆弾を連想させるようなカットだった。恐ろしかった。異分子が入り込んだから島ごと消滅させるって、地図上から消して封鎖するんじゃなくて、焼け野原にするってこと……。思考回路が戦争に通じるそれ。違うな、あの地球は、きっともう何百年も移民星と戦争をしているんだ。