読書記録

読んだ本の感想まとめ。

仮題・中学殺人事件

どれが作中作で、どれが作品の中の現実なんだか分からなくなって目も思考もぐるぐる。
孤独な作家少年もヒロインちゃんも凄惨な飛行機事故も本当はなかった、フィクションだって思っていいのか?

帯や書籍紹介文の時点で盛大なネタバレをぶちかましてくるじゃん、と鼻白んでいたら(ならなぜ買った)、作者自ら冒頭で読者を煽ってくるタイプの作品だった。
「密室殺人なぜで章」がミステリーにしては尻切れトンボすぎたから消化不良のまま次の話を読まざるを得なかったけど、「真犯人はきみで章」まで読むと構成の巧さが分かる。真犯人=読者、ははあなるほどと思った。
辻 真先さんは、1970年代当時ではかなり先駆的なミステリー作家だったのではないかな。

あと解説が作家と同一人物じゃんか!
妙に辛辣な物言いをする人だな、作家の悪友か何かか?と思ったら。
下の名前の響きが一致している時点で気付くべきだった。

探偵キャラクターたちのやり取りはコミカルなのに、金田一少年の事件簿並に真犯人が死にまくる鬱エンド。そして真犯人に意外性がある人が多い。
特に恋心の方向性を誤ったために人を殺めてしまった少年の最期は鬼畜。彼が何をしたというのか。すみません尊い命を奪っていました。
車椅子の少年の最期は、うつ病患者としてはなんとなく理解できてしまった。
飛行機事故で両親と死に別れ、10代にして体が不自由になり、最愛のヒロインに振られ……絶望するなと言う方がそれこそ鬼畜。というか、むしろ彼の今までの淡々とした精神状態の方が私には異様に見えた。
飛行機事故の唯一の生存者なんて、精神医学では異常体験の極みだと思うよ。

登場人物の価値観や容貌の描写に逐一時代を感じる。
男子は女子を、女子は男子に好意を抱くのが自然の摂理と捉えられていた時代もありましたね。
これが30……いや半世紀前の日本ッ!