読書記録

読んだ本の感想まとめ。

がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた

乳がんの診断を受けたので、自分の病気について勉強するために読んでみた。
正直、表紙を見た瞬間は、「独身の私が子持ち主婦の体験記を読んで何か参考になることあるか?」という懸念がないわけじゃなかった。
でも読了した今は、読んでよかったと心から思っている。医者がくれる乳がんの資料には、患者さんの生の声は載っていないので。
特にがんとうつ病が密接に関係していることが分かったので(なんでこれ患者用資料に記載しないんだろう)、うつ病患者として、最大限のリスクヘッジをしようと思う。

1話 治療法を決めるのは…私?

何を当たり前のことを、と思った。でもうつ病の方を考えると、主治医が合いそうな薬を提案してくれるから、私はそれを受動的に受け止めていればよかったんだよな。乳がんは違うような。

著者と違って、私はしこりのサイズが結構でかい(5cm超えてるらしい)から、問答無用で全摘手術になると思う。迷う余地なし。
薬物治療でかなり小さくなれば話は別だが。

著者の場合、告知後どうやって家まで帰ってきたか覚えてないってマジか?
受診後に買い物で服売り場をうろうろし、役所で国民健康保険の脱退手続きをしてきた私は一体???
医者に告げられた後の私の一言、「あっはい、でしょうね」だったんだが?
眠れないとか、将来を悲観するとか、何も手につかないってことも一切なかったし。

しかし、乳がんが原因で適応障害になったらしんどそうだな。
例えば職場の業務や人間関係が発症の原因なら、退職すれば落ち着くと思うけど、乳がんからは逃げようがないじゃん。

2話 さーちゃんのママからがん患者へ

自分の皮膚を使った乳房再建手術、腹部から取るならひょっとしてたるんだ腹の肉がスマートになるのでは?!(たぶんそういうことではない)。
乳輪乳頭まで再建できるのは驚いた。膨らみだけじゃないのか。
私はどちらかというと貧乳に属するから、背中からの移植で事足りるかもな。
皮膚を使った場合に残る傷って、帝王切開の時にできるみたいな感じか?

インプラントを使う場合のメリット・デメリットは省略されていたけど、コミックエッセイだから説明よりストーリー重視になるのは仕方ないのかしら。

でも一番思ったのは、コロナの外出自粛のせいで、少なくとも向こう1~2年は生でこういう体験を聞く機会は望めないだろう、ということ。
実際に再建された乳房を見れば、具体的にイメージが湧いていいと思うんだけど。コロナ憎し。

乳房温存した場合、毎日通院する必要があるの?
そんなの、フリーランスか専業主婦かパートタイム労働者しか選択できなくないか?
フルタイムだと選択肢から除外するしかない。

3話 「やりたい」を叶えてくれる病院はどこ?

「胸を再建するのは形成外科なので、同時再建の場合は2科連携での手術になる」
ちょっとー! そういう大事なことは患者に渡すパンフレットに書いておいてー! めっちゃ初耳ー!

4話 がんを知られたくない

告知の翌日に上長に告げた、どころかしこりが見つかったところから伝えていた私は一体???(まあ障害者雇用の人達が集まった部署だから勤務時間に融通が利く、っていう安心感はあったし)。

私は幼少期繊細だった自覚はないが、高齢出産で生まれた末っ子なのでげろ甘やかされた記憶がある。
当時、母を「なんでこの子はこうなのか」と悩ませていたのだろうか。申し訳ない。多分、聡明で努力家な貴女のお腹に宿ったこと自体が間違いの始まりだったんです。

しかし著者のお子さん、3歳じゃあ病気のことをどんなに嚙み砕いて話しても伝わらないだろうなあ。
いつか、齢2桁になるくらいには伝えられるだろうか。

「かわいそうと言われるたびに心が冷えていった」
わ、わかるこの感覚。同情してほしいがために報告したんじゃない。
言葉が見つからないなら何も言わなくていい。言葉は一歩間違えれば人の心を切り裂くんだから。

ボディシートが術後に活躍するっていうのはメモしとこう。
なにしろ乳がん関係なく入院の経験がないもんだから、右も左も分からないのだ。

5話 かわいそうの呪い

入院部屋でこういう思慮が浅い人らが同室になったら最悪だわ~! ストレスで枕カバーとか嚙み千切りそう。
私だって親にも姉妹にも話してないし、余命宣告されない限り話すつもりないよ。
だって知ったって離れて暮らす人達には何もできないし、このご時世見舞ってほしいとも思わない。
ただ乳がんだという事実を知って悲嘆に暮れる日々が始まるなら、いっそ死ぬまで意地でも告げないわ。
私は「20代で乳がんを患ったかわいそうな娘」としてあの人達に認識されたくない。
私も入院したらカーテン引いて自分のベッドに引き籠ろう。同室の人とコミュニケーション取る義務なんてない。

そんな言葉を投げかけられて楽になる人なんていない
患者本人は私はかわいそうなんだとつらい気持ちになるだけなんだ
私は絶対に言わない
今後誰かが病気になってお見舞いに行くことがあったとしても
絶対に「かわいそう」なんて言わない

私も心に刻んでおこうと思った。

6話 いよいよ手術へ

ええ、手術で目が覚めたあとってそんなに痛いの。痛みを訴えたら薬投与してくれるもんじゃないんだ。怖い。

7話 退院は始まりだった

今のうつ病でお世話になっている心療内科とは別に、精神腫瘍科にもかかった方がいいのかちょっと悩む。
今はあっけらかんとしてるけど、リスクヘッジは大事だよなあ。

8話 「大丈夫だよ」と言ってほしい

みんな誰かに「大丈夫だよ」と「断定」してほしいから、根拠のないサプリメントや療法、今は特にコロナに関するうさんくさい書籍とかがビジネスとして成立してしまうのか。
私も就活で書いた書類あたりで、第三者に断定を求めてしまった心当たりがあるな。

9話 ママの中にいるバイキン

夜眠れないとか、電車で動悸がするとか、体重が増えるとか、肌がボロボロとか、完全にうつ病どん底の頃と被るんだが。
嫌だ~~~!!! 感覚が分かる分ある程度覚悟ができてしまうのが嫌だ~~~!!!

自分はまだましだと実感したくて、自分より不幸な誰かを見つけたくて闘病記を読むなら、こうして体験エッセイを読んでいる私だって同じくらい浅ましいじゃん?
著者だけじゃないさあ。赤信号、みんなで渡れば怖くない(違う)(ド級の死語)

3ヶ月後のロックフェスが目標。期間も規模もちょうどいいと思った。
しかしコロナ禍の今は、外出や旅行を目標に掲げるわけにはいかないからなあ。困ったもんだ。
昨年~今年にかけて乳がんの手術を経験した患者さんは、一体何を心の拠り所にしているんだろう……。

うつ病の方も最悪一生の付き合いになるかもしれない覚悟をしているから、自然と乳がんも一生の付き合いになる覚悟はしたぞ。
だから「がんは必ず治る」なんてエセ療法に惑わされるもんか。
うつ病乳がんも、もう私という人間を構成する一部なんだ。
付き合い方は専門医と相談しながら自分で決めていくんで、ほっといてくれ。

家族に自分の気持ちを理解してほしいとはまったく思わないなあ。
むしろ、私が生を終えるまで、うつ病のことも乳がんのことも一切認識されたくない。
何も知らないでいてもらう方が、私にとっては楽。

10話 空っぽの心

「精神的な自傷行為」という言葉にびっくりしたけど、何を隠そうそれが行き過ぎて病名がついたのが私なので、何も言えないのだった!
うつ病の症状のリスト、どん底期は全部当てはまってた。
でも経験があるからこそ、不安はないな。
思うんだけど、もし私がうつ病にかからずに乳がん告知を受けた場合、それをきっかけに適応障害うつ病を発症して、今頃希死念慮に苛まれていたのでは?
そう考えると、うつ病をあらかじめ経験しておいて得したのでは?(不自然なまでのポジティブ患者)

11話 どうにかしなきゃと前を向く

著者が自分の気持ちを言語化できてよかった。
言葉にできないうちは、悩みは永遠に解決しないから。私もここに辿り着くまで随分と時間がかかったけれど。

にしても、がんと精神疾患がここまで密接に関係しているとは知らなかった。
精神腫瘍科。15年前からあったんだろうか。母もそこにかかっていれば、がんの進行はもう止められずとも、もう少し楽に逝けただろうか。もう変えようのない過去のことを考えてしまう。

13話 小1の壁と術後5年目

ちょっと泣きそうになってしまった。小学一年生でも、対等に話そうという気持ちがあれば、伝わるものなんだ。