- 作者:三宅 香帆
- 発売日: 2019/09/19
- メディア: 単行本
私は紹介本の中に既読本は一冊もなかったので、自分の見ている世界の狭さを再認識するなどした。海外文学やエッセイは普段自分からはほとんど手に取らないので、いい後押しになった。人に薦められると安易に読んでみるタイプです。
あと書評なんて堅苦しい文章にしようと思えばいくらでもできるだろうに、どんなにヘビーな本を紹介する時もライトな語調を維持し続けているのがすごい。私だったら、太宰治や谷崎潤一郎の本を紹介するとき四角四面になるもん。
『臨死体験』は次に希死念慮が発現したときに絶対読みたい。そのときに読書をするエネルギーがあるのかは知らんけど。
たぶん、人間が悩んだり苦しんだりすることがなければ、この世の文学作品はほとんど生まれていなかった。(中略)そう思うと、「本」という媒体が、私にとっては人類の業からしみ出た汁のようなものに見えます。
例えが秀逸すぎて泡吹いた。
確かに毎日通勤電車でSS書き散らしてた頃、精神は崩壊寸前だったもの。鬱憤や不条理や哀傷が積もり積もって境界線を越えたとき、人はそれらを言葉に変換したくなるんだと思う。私がこの一年ろくに小説を書けていないのは、自分の中の汚泥が一定量を超えていないからだ。
どんなに幸せで清廉潔白な作品を作る作家さんでも、その源はそんなにきれいなものではきっとない……と思うのは私だけだろうか。
数えてみたら、33冊中12冊が読書メーターの読みたい本に追加された。ほくほくである。