読書記録

読んだ本の感想まとめ。

レンタルロボット

レンタルロボット (ジュニア文学館)

レンタルロボット (ジュニア文学館)

  • 作者:滝井幸代
  • 発売日: 2011/09/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
初っ端から作品タイトルを全否定することになるのだけど、「ツトム」は本当にロボットだったのか、あの店でレンタルされているのは本当にロボットなのかと疑問に思っている。自我があって、人間と同じようにものを食べて、排泄して、涙を流して、誰かの言葉に反発するなら、それは名目上ロボットとして扱われていても、人間と何が違うのだろう。

まだドラえもんと同等のロボットが誕生していない現代においては、ほぼ人間と見分けがつかないロボットのレンタルよりも、身寄りのない孤児を洗脳してレンタルしていると夢想した方が現実味があるのだ。

そして私は、主人公が見た夢――主人公自身がロボットだと宣告されるあのシーンは、本当に夢だったのかと疑ってすらいる。だって、作中には全否定できるだけの根拠がないのだ。お母さんが「大事な話がある」と2回言わないと何故断言できるのか。……ああ、ここまで書いてしまってなんだが、これは作者を侮辱する感想かもしれない。

「あなたは橋の下から拾ってきた子供なのよ」は昔からよく使われる脅し文句だが、「店に返すぞ」もなかなかパンチの効いた脅し文句。

ツトムが店に返され、記憶を消され別の人の家族になったという事実は、子供の読者の心を抉るだろう。「返さないでください」と伝えた主人公の心の、なんと強いことか。

健太がお父さんやお母さんに「お兄ちゃんでしょう」と言われた時、私は実の姉のことを考えた。私は高齢出産&帝王切開でやっと生まれた子供だったから、今思い返せばそれはそれは甘やかされて育った。洋服のお下がりを着た記憶なんてまったくなく、あらゆる持ち物を新品で買ってもらった。ねだれば何でも言うことを聞いてもらえると、無意識に信じていたのだと思う。

だから姉がこの作品の主人公のように、「お姉ちゃんでしょう」と嗜められたことは、一度や二度ではなかったはずだ。しかも健太とツトムとは違って血縁関係のある実の姉妹だから、逃げ場なんてなかったはずなのだ。そうやって幾星霜も姉として色々なものを耐えるうちに、「この家は妹優先だから」と、手を伸ばせば届いたはずの何かに手を伸ばさなかったことがあるのかもしれない。そう思うと、自分が生まれてきた意味について考えずにはいられなくなる。