読書記録

読んだ本の感想まとめ。

トロイメライ

トロイメライ (立東舎)

トロイメライ (立東舎)

  • 作者:村山 早紀,げみ
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
作者御本人は「長編タイプ」と仰るけど、長編が上手い作家は短編の質も高いように思う。表題作が特に面白かったし考えさせられた。私は趣味として自分でも書くから分かるんだけど、物語って膨らめば膨らむほど、起承転結や伏線回収の難易度が上がっていく。一切の無駄なく適切に物語を展開するには、高度な構成力が求められる。

もし第3弾が出たらまた読みたい。

トロイメライ

数十年の歳月を経て気候が変わり、春の始まりを教える花となったひまわり。気温36度が、春??? 勘弁してくれ。現実にならないとは言い切れない。

家族の空席を埋める、人間と見分けがつかないロボット。虚無と捉える人もいるだろうが、私はそれはそれでいいと思う。ペットを生きがいにしている人がたくさんいるように、ロボットが生きる理由になることだってあるだろうし、生前とは別に、そのロボットとの絆が生まれることだってあるだろう。

人間の代わりに、人間と瓜二つなロボットに戦場に行かせる。どれほど戦争の形が変わろうとも、理屈に合わないことをやっているという本質は変わらない。ロボット自身には精神がないから、攻撃されて苦しいとか、もう一度家族に会いたいなんてことを思うのは不可能だ。でもだからといって、誰も傷つかないわけではない。何も感じられないロボットの代わりに、周りの人間が哭く。学生時代からの相棒であるソラタを戦場に行かせることになったパパの気持ちを思うと……。

神様は人間に、人間同士で血を流さなくても済むようにと、話し合うための言葉と知恵と哲学を与えてくれたのかもしれないのに、人間はそれを戦争のために使う。

いったい誰が、戦争なんてしたいの?
日本人みんなが、かもしれない。

政治の真理だと思った。戦争をやろうなんて言い出した国の代表を選んだのは、他でもない自分達である。サイレントマジョリティーは罪だ。間違った選択肢を選んでしまった大人達と、後世でその尻拭いをさせられる子供達。どちらも不幸である。

歴史を変えたら、主人公や弘志くんの両親は一緒にならないかもしれないし、そうなると二人は「世界の誰とも繋がらない二人」になる可能性もあるわけだけど、それでも未来を変えることを選んだ少女達に拍手。