読書記録

読んだ本の感想まとめ。

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

『やりたくないことはやらない』っていうのが僕の持論。

ま、『やらなきゃならないことはやるしかない』っていうのもセットだけど。

古典部〉シリーズの読者なら沸き立つに違いない台詞。主人公と奉太郎が出会う世界線はどこにありますか。性格はまるで似てないけど、似ている価値観があるので、案外相性はいいかもしれない。

見えない聞こえないだけではなくて、記憶からも消去されていたのか。それってつまり、初めから存在していないと同義。たぶん死ぬより辛い。人は人の中でしか生きていけない。誰かに存在を承認されなければ生きていけない。

ある人の存在が世界から消失していく、主人公は抗うものの最終的には他のみんなと同じになる、って大筋は昔他の小説でも読んだことがあったような気がしてるけど詳しくは思い出せない。この作品よりもどっぷり恋愛だったような。デジャヴか否か……?

サクラダリセット』とか『いたいのいたいの、とんでゆけ』とか、現代+異能力や時間跳躍などの不思議設定作品は結構読んできたから、本能がこの本を選んだのかもしれない。

ライトノベルにしては筆致が硬派。

たぶん硬派な読書家には敬遠されがち。タイトルで大分損してそう。

右に倣えの生き方は楽でいい。いいこと、悪いことの判断を全部自分でするのはカロリーを使うし、自分の意見を持つと、否定されたときに傷つくことになる。その点、『みんな』と一緒であれば、安心、安全でいられる。見たくもないものを見ずにいられる。考えたくもないことを、考えずにいられる。全部他人事で済ませられる。世の中なんてその程度に薄情だ。

実に日本人的な理屈。もちろん世の中の全員がそうではなくて、例えば弁護士とか企業の経営者とか、すべてを自分で判断して自分で切り開いていく人間も一定数いる。でも、先輩をいないことにしてしまったこの高校の大多数の生徒を、糾弾できない人間だっているはずだ。少なくとも私はそうだ。SNSでニュースに意見するより、バズツイートを賛同の意を込めてRTする方がずっと楽。一瞬で済む。こういう姿勢が誰かの精神を摩耗させているかもしれないことを、私はもっと肝に銘じるべきだ。

全校生徒へ向けての大告白。青春だなあ。読んでいるこっちがこっ恥ずかしくなった。10代にしかできないノリ。オバサンには眩しくて仕方ない。これだけやったんだから、一生添い遂げないと読者が許さないよ。

次巻への吸引力がすごい。