読書記録

読んだ本の感想まとめ。

西川麻子は地理が好き。

西川麻子は地理が好き。 (文春文庫)

西川麻子は地理が好き。 (文春文庫)

「ナトロン湖畔に愛の像」が一番好きな話。さくさく読めるけど真相にインパクトがない事件ばかりだなと読み進めていったら、最後が爆弾だった。殺人を犯してからの彼は愚者だと思うけど、私は被害者のように加害者の行為を糾弾はできない。だって奥さん本人が望んだことで、加害者はそれを真摯に叶えようとしたんでしょう。彼が奥さんの最後の願いを一蹴して、悲嘆の闘病生活の末に命を引き取った……なんて真相の方が、私はずっと気持ち悪い。

ぶっ飛んだ愛は倫理を外れてからが本番よ。これが金田一の事件なら、石化した鳥の写真を見せられても尚妻の永久保存を強行しようとしたに違いない、というかマッド・サイエンティストならそれくらいの気骨があってもよかった。この写真をグロテスクと決めつけるのはどうかと思う。美醜が幸福のすべてを決定するわけじゃない。

あと欲を言うなら、話に出てきた場所の写真が、モノクロでもいいので散りばめられていたら120点だった。「大将の地図記号」に出てきた地図がとても分かりやすかったので。