読書記録

読んだ本の感想まとめ。

ニセ科学を10倍楽しむ本

ニセ科学を10倍楽しむ本 (ちくま文庫)

ニセ科学を10倍楽しむ本 (ちくま文庫)

  • 作者:山本 弘
  • 発売日: 2015/04/08
  • メディア: 文庫
架空のキャラクターにニセ科学信者と批判者という役柄が与えられていて、信者の言い分を確実に否定してくれるので勉強になるし、単純に爽快。空想科学読本みたいにシリーズ化したら面白いと思う(その際にはぜひ水素水をバッサリ切り捨ててほしい)。

信者にこの本を読ませたらぐうの音も出なくなるのではと思う一方で、作中のキャラクターと違って現実の信者は人の話を聞かないので期待しない方がいいかも(苦笑)

水は字が読める?

昔校長が全校集会でしたり顔で語ってたやつね……こんな話を聞かされるくらいなら、校長宅の昨晩見たドラマの感想でも語って貰った方が100倍マシだったね。

ディプロマミル……知らなかった世界だ。金と引き換えに学位を与えるのか。こういうのっていたちごっこなんだろうね。

本に載っている結晶はたくさんの結晶の中から選ばれたもので、人の意識や集中力が結果に大きな影響を与える。これが故意に行われた選択ならまだいいが(いや全然よくないが)、本人が実験結果を疑っていないんだとしたら尚質が悪い。科学のド素人が科学的に何かを証明したいなら、専門家を同席させろ。絶対にだ。

微生物が作り出す物質が人間にとって都合のいいものであれば発酵、悪ければ腐敗。自然界のものを自分達の都合で善悪に分別している我々人間は、他の生物に冷笑されている。あらゆる生物は所詮、自然がなければ生きられないのにね。自然を懐柔する神にでもなったつもりなのかね。

SHINE、昔コナンに出てきたネタだ。ローマ字呼びだと侮辱に、英語だと光っていう単語になるっていう。言葉は、文化が違えばまるで反対の意味を持つこともあれば、時代が意味を変えることもあるし、もちろん時と場合によっても変わってくる。言葉単体を指し示していい悪いを断定するのは、教育者のやることではないね。

道徳の根拠を科学に求めてはいけない。だからこそ、道徳の教科書には作り話がたくさん載っているのだ。

何十億年後に現れる人間のために、自然界が道徳の根拠をあらかじめ用意してくれているわけがない。

秀逸な文。あらゆる生物は自然の下に蔓延っているのであって、自然と同等の地位を持つ生物などいはしない。

「じゃあ、子供にどうやって道徳を教えればいいんですか?」オイ教師! 教育の素人にそれ訊いちゃダメでしょう。本当に教員免許を持っているのか? まともな教育論を小説家に教えられてどうする(先生が信仰役だと理解して言っている) 

え……江戸しぐさってニセ歴史なの。ショック。紹介本、絶対読む。

ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる?

脳の専門家にかなり直接的な言葉でぶっ叩……いやもはや指をさして笑われていて、さすがにちょっと提唱者が不憫(苦笑)

人間は過去を忘却する生き物だから、そのぼんやりとした過去と今とを比べて「今の若者は〜」と批判する。自分の印象で何かを語る時、自分の記憶を安易に信用するからこうなる。客観的データを示せ、データを(自戒)。

凶悪犯罪を起こした人の過去を漁って、無理矢理犯罪と娯楽を結びつけるのは立派な印象操作よ。殺人犯の自宅にテレビがあったら、テレビは犯罪を誘発するから危険だっていう思想になるのか?

ゲームに限らず何かを批判する時、「何か」の知識をほとんど持たないのに屁理屈を並べ立てるのは、愚者のやることである。有識者から嘲笑されていることに気付け!

未知のものに不安や恐怖を覚えるのは人間として仕方ないけど、それを攻撃に変換するのは、これもまた愚者のやること。ゲームも、あと半世紀くらいしたら「ゲーム脳」だなんて言われなくなる時代が来るのかな。

脳トレニセ科学っていうのはこの本を読むまで本気で知らなかった。

有害食品、買ってはいけない

基準値を超えたからって、すぐに有害食品だと糾弾するのは、消費者として思慮に欠けているということか。そもそもの話、基準値とは名ばかりの「暫定値」、結構適当な印象を受けた。

買ってはいけないシリーズ、化粧品について語られた本は読んだことがあるし、一時期鵜呑みにしたことすらあったけど、あれもニセ科学だったのか……。世の中何を信じればいいのやら。

一部の人に危険なものですら、全員が買ってはいけないと排除ばかりしていたらそう、本当に食べられるものがなくなってしまう。排除ではなく、すべての食品が毒にも薬にもなり得ると考えて、自分にとって最適な量を見極めることが大切。

なんだか社会保障にも通じる部分があると思った。弱者は排除すればいいという価値観は、戦争や虐殺の火種になったり、長い目で見れば人類衰退に繋がる考え方ではないかと思った。買ってはいけないシリーズを支持する人は、弱者も理解しようとする前に排除しようとする人間なのでは? と思ってしまった。

人工=危険、自然=安全という固定概念は払拭が必要。むしろ自然界にこそ、外敵対策として毒を持つ植物はたくさんあるし。

ヴィーガンへのイメージがますます悪くなってしまったなあ。人間だって食物連鎖から逃れることはできないのさ。大事なのは「他の生物の命をいただいている」という意識だと思う。

血液型で性格がわかる?

出たー! 一時期「◯型の取扱説明書」みたいな本が売れたよね。でもあれって言い方が巧みなだけで、バーナム効果で当たっているように錯覚してるだけなんじゃないの?(……という言葉をつい最近やっと知った)

血液型と気質の関連性って、90年から何人もの専門家に否定され続けているんだ。それなのに、私も含め固定概念は未だに払拭できないんだ……。

戦前から血液型と気質の関連性が研究されていた日本。根は深い。

71年に発売されベストセラーになった「血液型でわかる相性」は統計でもなんでもなく、著者の周囲の人間関係に感想を添えたものだったり、感想どころか完全なる想像だったりするらしい。小学生の夏休み絵日記か?

「◯型の人は◯◯」は主語がでかい。例えば外国人が「日本人女性はうなぎだ。うまくつかめない」と言うのと何ら変わりない差別的意見である。

動物や雲が地震を予知する?

動物嫌いじゃない人にとっては寂しい話だけど、人間は忘却する生き物だから、思い出すきっかけがない動物の異常行動が忘れ去られるのは仕方ないね……。

現代人は空を見ない。だから取り立てて特異ではない雲を目にして異常だと感じてしまう、という説には説得力を感じた。心が急いていて、空を見る余裕なんかないのだ……。視界には入っているけど、見ていないんだね。

明日何時に雨が降り出すか、ですらしょっちゅう外れるのに、大地震のタイミングを我々人間が予知しようだなんて、土台無理な話なのかもしれない……。

2012年、地球は滅亡する?

「外れた予言のリサイクル」という言葉が涙を誘う。1999年のノストラダムスの大予言はうっすら記憶があるけど、13年後にマヤ文明云々と言われ始めた時は、「またオカルトを声高に主張して儲けようとする輩が現れたよ」としか思えなかったよ…。

ああいう人らは儲けることさえできれば、たくさんの人が恐怖心を煽られることなんて屁とも思わないのさ(もしくは、大衆から承認を得たい自己顕示欲の塊か?)こういうのって、法的に取り締まれないものだろうか?

アポロは月に行っていない?

これ、「アポロは本当は月に行っていない」説が嘘ってことか。陰謀説そのものを知らなかったから驚いた。

この章での学びは「発信される情報を鵜呑みにせず、違和感を覚えたら自ら調べる癖をつける。受け取る情報の取捨選択は、高度情報社会において必須能力」「デマの拡散をした人は、必ずしも被害者とは言えない。誹謗中傷に加担したという解釈もできる」の2点だ。

マイナスイオン・ブームの終わり

ドライヤーでよく見た。今でも普通に売られているっぽい。マイナスイオンが髪に与える効果なんて無学ゆえよく分からなかったから、とりあえずマイナスイオン効果を謳っていない、強風が出て早く乾くドライヤーを使ってるけど、案外賢い選択だったらしい。

進化論と創造論

創造論も9.11テロ陰謀論も、信じる人は人の話を聞かないという点において共通している。相手の言い分を聞きもせず自分の意見だけ押し通そうとしたんじゃ、議論どころか喧嘩にもなりゃしない。ただの地団駄だよ。

大体、教育現場でまったくベクトルの違う人間の成り立ちを教えたら、子供は混乱するんじゃないのか? 何が平等だ。「正しく生きる」ってどういうことか分からないけど、どんな宗教でも、大勢の人の命を奪うテロ行為を正当化はできないよね。