読書記録

読んだ本の感想まとめ。

日本植物学の父 牧野富太郎 「好き」を追い続けたぼくの話

あれだよね、ちょうど今NHK連続テレビ小説の原作というか、ベースになっている偉人だよね。

伝記で語り口が本人風、つまりは小説調ってなかなか見かけないので(私が知らないだけかもしれないが)、個人的には通常の解説調の伝記より理解がスムーズだった。

「小学校を2年で退学」が出版社の特集ページでアピールされていたけど、実際読んでみると、12歳入学→14歳退学なので、今で言う7~8歳で学校の勉強を放棄したわけではまったくない。年齢的には今の中学校、勉強の内容的には高等学校中退なのでは?
幕末生まれ、寺子屋に通っていた時代の人の学歴を取り上げて「小学校退学!?」と揶揄(と受け取られかねない)するのは悪手なのではと、勝手に心配になった。

おばあさんと奥さんが富太郎にとってスーパーヒーローすぎる。
おばあさんが子どもの彼に跡取りとしての仕事を強いていれば、植物学者の才能は萎んでいただろうし、
奥さんがいなければ彼の研究と人間的な生活は成り立っていなかったはガチ。
途中料理店を切り盛りしながらも6人の子供たちを育て、借金取りと戦い、家を建てる計画まで練っていたすえさん何者。1日の時間が50時間あるか、3人くらい複製する能力でもないとおかしい。しかも苦労が報われないまま亡くなってしまって……。すえさんにとっては、内助の功こそが幸福だったのだろうか。どちらかというと、富太郎を支え続けた彼女の伝記こそ読みたいと思った。日記とか残っていないのかな。

偉人といってもその人自身の力だけで功績を残すわけではない。
特に富太郎の場合、困難にぶつかるたびに手を差し伸べてくれた周囲のフォローが奇跡的だったと言える。
それはそれまでに彼が積み上げてきた実績のおかげもあるだろうし、彼自身の人たらしな部分もありそう。どん底に突き落とされても、結果的に誰かが助けてくれるって才能だから。

一般論として偉人って壮年期後半(50歳くらい)から経済力が向上して、それまでの家族の苦労が報われるイメージがある。
でも富太郎の場合、自宅を構えても雑誌や図鑑の自費出版、採集旅行が影響して、とりたてて「裕福」と言える時代がなかったのだな……。

児童書なので挿絵が豊富ではあるものの、目鼻口の配置が10代のままなので違和感がすごかった。
イラストレーターさんがそういう画風なのか、子どもに親しみやすい外見にしているのか?