超能力篇 予知の悲しみ/闇につげる声 (SFショートストーリー傑作セレクション 第二期)
- 発売日: 2020/06/24
- メディア: 単行本
超能力 星新一
ラストに皮肉が効いているショートショートが特徴的な星新一だけど、この話も強烈。超能力って言うと別の世界線の話に聞こえるかもしれないけど、探偵みたいに人の後ろ暗いところを理詰めで暴く能力がある人からは離れる人もいるのだろうと思った。正しすぎることが疎ましくなることは誰にでもあるので、誰も責められない。
児童書で4ページの超ショートショート。文庫本にしたら見開き2ページに収まりそう。
余地の悲しみ 小松左京
余地は未来を変えるのに役立ってこそ、値打ちがある。
その時、その時の意志の動き方まで決定されてしまっている、凍結された人生をあらかじめながめてしまうとしたら――こんな憂鬱で、退屈なことはない。
予知能力の覆しようのないデメリットをつきつけられた。凍結された人生という言葉が胸に刺さる。確かにそんな人生、生きる意味が分からなくなってとっとと首括りたくなりそう。
時間移動のパラドックスは有名だけど、予言のパラドックスは初耳。人間が欲を出しすぎるとろくなことにならない。
赤ん暴君 平井和正
ただひたすら怖い。フィクションとはいえ、赤ん坊に恐怖を抱いたのは初めてかもしれない。暴君どころじゃないだろ、人類の支配者になり得る存在だろ。ヒトラーよりもタチが悪い。悪辣すぎて、前3話の記憶が全部飛んだわ。SFというより完全にホラー。今はまだハイハイする程度でしか自分の体力では動けないだろうけど、これがつかまり立ちをして歩き始めたらどうなるんだろう……と考えると口唇が震える。夢に出そう。
闇につげる声 筒井康隆
警察の取調べ以降の展開が速くて驚いた。
確かに心を読める能力を持つ主人公が、周囲にとっては一番恐怖だろう。ついこの間まで隣にいたクラスメート、近所の人達が敵に変わった。両親すら。主人公はもう息を引き取るその瞬間まで、両親と顔を合わせる機会は訪れないのだろうと思う。
だったらこの惨状を避けるために、超能力についてはすべて伏せて、犯罪者として裁きを受ける道を選ぶべきだったのかというと、それは絶対に違う。
五人が生きている間に、彼らが迫害を受けることのない時代が到来することを願ってやまない。