読書記録

読んだ本の感想まとめ。

花冠の王国の花嫌い姫

固定男女カプで、幸せが約束されたロイヤル恋愛小説が読みたくなって、5年前に読んだ本を再読。
シリーズの初刊は恋愛色を薄味で、どちらかというと政治色が強い印象。
でも第1巻は主要登場人物たちの根が優しいこともあってか、ヒロインが危険な目に遭わないこともあってか、比較的穏やかに読める。侍女2人が雪害の犠牲になったのは肝が冷えたけれども……。
第一線で政治を動かしている人って、迂遠な言い方をすることが多いから、読者としても素直な読解だけじゃダメな気がする。

私は雪国の出身でも花粉症患者でもないので、薄いベール越しに物語を見ているような感覚なのかもしれない。
現実で雪害と隣り合わせで生きている人や、重度の花粉症に悩まされている人に安易に勧められるかといったら、勧められないだろう。

フローレンスの花粉アレルギーが物語中盤、割と早い段階でバレてしまったのは、気の毒さより安堵の方が勝った。
これから夫婦として生きる何十年も隠し通すなんて無理ですわ!!
夫婦だからって己の事情や価値観を100%さらけ出す必要はないと思う。
でもフローレンスの花粉アレルギーは、彼女の人格を形成する根幹ともいえるものだから(彼女は不本意だろうけど)。

執政や社交の経験に乏しいフローレンスが、ラハ・ラドマの中で居場所と存在理由を見出していく過程は、このシリーズのもう一つの軸。
執政に必要な情報を家臣側で呑みこむのではなく、開示して判断を王に委ねるっていう考え方には同感。
意思決定の余力を下の人間が奪うべきではないし、奪ったら意思決定を家臣がしているのと変わらないよね。

フローレンスの実兄セリスにはこれからもっと活躍してほしい。
大国の第一王子としての謀略を遺憾なく発揮してほしい。
なんならイスカと一時対立してもいい。

エピローグ時点で明らかにフローレンスよりイスカからの矢印が太くなっていてにっこり。
男性側のクソデカ感情大好き~~~。

1点だけ個人的な好みを挙げるとするなら、作中の「アイスクリーム」という単語は、現実世界で耳慣れた単語すぎてちょっと興ざめ感があった。
バニラアイスクリームのことをフランス語では「グラス バニーユ」というそうだけど、そういう日本人には耳慣れない単語なら完璧に没入できたね(何様)。

いつの間にかシリーズ完結してた。最終巻まで追いかけてみようかな。