読書記録

読んだ本の感想まとめ。

ぼくは満員電車で原爆を浴びた

著者・米澤さんの徳が高すぎる。並の人間性じゃ原爆の惨禍を後世に伝える責務なんて背負えない。
被爆の数日後に寝たきりになって、母親が吐血して死んでいったあたりで、私なら人生を諦める。喉元に包丁の刃を向けたことを責められない。
それにおびただしく剥がれた皮膚や折り重なる遺体の記憶が、生涯著者の心を苛むと思う。想像を絶する。生きていてよかったなんて軽々しく言えない。

要所要所で差し込まれる挿絵が、作者の印象に残った所だけ描写されている分、写真より鮮明に絶叫が聞こえてくるような気がする。

小学一年生の少年が、広島→大阪→山梨と彷徨って父親と再会できたというエピソードが奇跡的すぎる。事実は小説より奇なりとは言うけども……。

原爆ぶらぶら病は初耳。病名に悪意が感じられる。周囲から怠け者のレッテルを貼られたとのこと、他人事とは思えない。いや、うつ病は研究も薬も周囲の理解も進んできている分、まだ恵まれているのかもしれない。