映画は映画、小説は小説で楽しめた。
現実に起こったグリコ・森永事件の参考文献も読んでみようと思う。
私は平成生まれ。当時の記憶を持つ人の苦しみは、容易には想像できない。
作中の俊也以上の年齢の読者は、この物語を読み終えられるのだろうか。
犯罪の後遺症で長く苦しむのは、結局社会的弱者なんだと痛感。
途中株やら利権やら小難しいことが出てくる割に、犯人側の動機がしょうもなさすぎて溜息すら出ない。阿久津のような真摯な記者が靴底をすり減らした意義はあったのだろうか。あったのだと思いたい。生き別れた親子が再会できたのだから。
私が俊也の立場だったなら、三十年以上も事件の亡霊に追いかけ回された聡一郎の人生を知って、何不自由なく生きてきた自分の人生との乖離を罪だと捉えると思う。
テンポは映画版の方が好きだけど、阿久津の価値観や俊也との距離感は原作の方が心地いい。