(前略)プラスの部分を好ましいと思いだれかを好きになったのならば、嫌いになるのなんかかんたんだ。プラスがひとつでもマイナスに転じればいいのだから。そうじゃなく、マイナスであることそのものを、かっこよくないことを、自分勝手で子どもじみていて、かっこよくありたいと切望しそのようにふるまって、神経こまやかなふりをしてて、でも鈍感で無神経さ丸出しである、そういう全部を好きだと思ってしまったら、嫌いになるということなんて、たぶん永遠にない。
すごい自然に私の中に入ってきた言葉。この数行を読むためにこの本を手に取ったのかもしれない。
真っ先に推しのことを考えた。工藤新一って事件にかまけてろくに連絡寄越さないし、デートでホームズの話を延々して相手の話聞かないし、女心に疎いし、冷静に考えるとやめておいた方がいいと思うけど、多分蘭ちゃんはそういうかっこよくない面もひっくるめて全部好きなんだろうな。尊い。
人のマイナス面も愛おしいと思えるようになった時、それを(恋愛に限らず)愛と呼ぶんだと個人的には思う。
私を捉えて離さないものは、たぶん恋ではない。きっと愛でもないのだろう。私の抱えている執着の正体が、いったいなんなのかわからない。けれどそんなことは、もうとっくにどうでもよくなっている。(後略)
私は自分の感情の正体をなんとか言語化しようとするタチなので、分からないままでいいとする主人公の価値観が理解できない。得体の知れない自分のままでいいっていうのか。