- 作者:太田 忠司
- 発売日: 2020/06/12
- メディア: 単行本
吉田の人間臭いところも知りたいので、ぜひシリーズ化してほしい。
川の様子を見に行く
過去の罪を知る人間を葬るために罪を重ねなかったという点で、殺人犯にしては賢明だと思ったけど、まったくそんなことはなかった。
「今日――佐野先生は大雨の日に川の様子を見にいらしたんですよ」
「そして、落っこちてしまったんです。自ら足を滑らせてね」
秀逸なラストに舌を巻いた。
ふたりの秘密のために
どろどろの遺産相続争い。莫大な遺産と理事長の地位をもぎ取ろうと必死な兄弟姉妹の話。一枚のスケッチが生き方を180度変えるなんて、本当人生ってやつは一寸先が分からない。
でもせっかく遺言書に従って全部相続できるのに、それを兄姉達に均等に再分配するって驚愕。絶対ろくな使い方しないぞ。私なら全額団体の運営費に充てるけど。
ロイと幸せになってください。
燃やしても過去は消えない
過度の自虐がその人を死に追いやることもあるのかもしれない。耳が痛い。
あと一人称視点じゃないのに「信用できない語り手」手法を読んだ気分。
不器用なダンスを踊ろう
主人公とヒロインは、お互い様ってことで、フェアな関係だったと思う。
恋人同士のうち片方の命がもうすぐ尽きてしまう、それを受け入れられないもう片方って設定の恋愛小説ってものすごく多い。吉田の言う通り手垢のついたネタではあるけれど、こういう裏事情があるとピリ辛なスパイスが加えられた感じがして新鮮だった。
何かを集めずにはいられない
コレクションするものを時間とか人間の感情とか抽象的なものとして捉えると、人は何かしら収集しながら生きているのかもしれない。そうすることで、自分が生きた証を残したいのかもしれない。私は物語の自分の感想を集めるのが好き、かな。