読書記録

読んだ本の感想まとめ。

若おかみは小学生!(1) 花の湯温泉ストーリー

1引っ越し

あの事故で、一人だけかすり傷ひとつなく助かったんだから、おっこちゃんは運がいい。

私がこれを言われた側だったら、間違いなく脳内で舌打ちする。小学生にとっての人間関係は、学校と家庭がほとんどを占める。その半分を突然失ったのは「運がいい」のか? きっと善意で言ってくれたのだろうけど、はっきり言って思慮が浅いと言わざるを得ない。下手な慰めしかできないなら、黙ってただ傍にいる方がずっといい。

アイドルのポスターは、あわただしくしているときに、うっかりやぶいてしまった。

こういう何気ない一文に泣いてしまう。もうこれまでの生活には戻れないことを暗喩している。

私もおっこちゃんとほぼ同じ年齢の時にママンが天国へ行ってしまったから、気持ちがちょっと分かる。大切な人を亡くした喪失感って、お葬式で忙しくしている時はまだ実感が持てなくて、諸々済んで落ち着いた時に時間差で襲ってくるんだよ。

泣くんやったら、もっと、ぱあっと思いきり泣けや。

そやから、そんなしんきくさい泣き方すんなっちゅうねん、泣くんやったら子どもらしゅうに、わんわん泣かんかい!

そうだぞ。社会に出たら人前でそういう泣き方はできなくなるぞ。悲しい時にちゃんと泣いておかないと、胸の内で燻るその哀切を同じ温度で何年間も引きずる羽目になる。こんなに深い言葉誰が言ったのかと思ったら、幽霊。生身の男子だったら恋愛フラグかと思えて楽しいのに。口惜しい。

4お客様とけんか

両親がいなくなったら、しょんぼりしおれてなくちゃいけないの? なにもかもめんどくさいって投げだしていいの? あたし、そういうのきらい。

もっとがんばらなくちゃ、いけないんじゃないの。

鋼のメンタル。私はあかねくんに賛成。大切な人を亡くした直後くらい自分を労らないで、いつ労るんだろうって思う。おっこちゃんは真面目系クズの私とは違って、真性の努力家であることがこれらの台詞から窺える。将来、精神を壊さないように気をつけてほしい(特大ブーメラン)

9からまわりする日

何をやっても上手くいかない日って、誰にでもある。私はそういう日は可能であれば外出をやめて、好きなことだけやって、夜は早めに寝る。

でもおっこちゃんは「まだ何かできることがあるんじゃないか」って模索していて、再び鋼のメンタルだと思った。大人だったらやけ食いやけ酒愚痴大会からのふて寝がいいところ。努力家の域を超えて努力の鬼じゃないですか。こういう、期待されている以上のことを成し遂げる姿勢が、旅館のトップには必要なんだろう。うん、資質はバッチリだと思う(何様)

11あかねとの約束

でもさ、がんばっても結果がだめだったら? それを思うと怖くない?

結果が出ないのは、努力のやり方がずれているからだってTwitterか何かで見たような気がする。自分に合っていない努力をしてしまうかもしれないが、努力してみなければ、向き不向きも分からない。努力はトライアンドエラー

12秋好旅館で

真月は態度こそ不遜だが、小6で英語の接客が一人前にできるのは本当にすごい。おっこちゃんが不出来なのではなく、真月のレベルが高すぎる。この世に産声を上げた瞬間から、跡取りとして育てられてきたことが窺える。能ある鷹は爪を隠すって言うけど、彼女はあえて隠してないんだろう。周りの大人に小娘だと舐められないために。

16ユーレイにしかできないこと

これまで読者に主人公の敵対キャラとして認識されていた真月が、当たり前のようにおっこちゃんを手助けする場面に惹かれた。本物の悪役として用意された人物だったら、無理矢理にでも棄権させて、心配するふりをしてコンテスト会場から引き剥がすだろう。根っからの悪役ではないことが分かるし、巻を重ねればいずれ主人公と手を組むこともあるのではないか。これからが楽しみなキャラクターだ。

腕にウリ坊が乗り移った時のデジャヴは分かりやすい伏線。これは完全に勘だけど、おっこちゃんだけが事故で奇跡的に助かったことに関係してたりします? 伏線回収が待ち遠しい。→と思っていたら、ラストで早々に回収。予想していた通りの真相が明らかに。2人の関係は、今後どんなふうに変化していくのか気になる。

おばあちゃんと亡きおじいちゃんと源蔵さんが秋好旅館を始める前の、青春時代の話がスピンオフで読みたいと思った。ひょっとして峰子さんを巡る三角関係があったりしたのかしら。