読書記録

読んだ本の感想まとめ。

マタタビ潔子の猫魂

マタタビ潔子の猫魂 (角川文庫)

マタタビ潔子の猫魂 (角川文庫)

互助でも依存でも師弟でもない、人間と化け猫の関係。夏目&ニャンコ先生ペアを思い出した。猫魂が潔子に憑依していけ好かない奴を叩きのめすシーンは実に爽快。フェレットが畏怖の対象になるという副作用があるので、飼っている人は要注意。かつて潔子と猫魂と相対した狸の新規ビジネスには笑った。一番強いのは狸かもしれない。でもごめん狸は飼いたくない。

鬼海星

自分もどちらかというと人のペースに巻き込まれる方の人間なので、胃をキリキリさせながら読んだ。別に何かに憑かれていなくても、人の財布をあてにして金を使う人種っている。自分の人生に関わらせないのが理想。

洗熊

再び胃をキリキリさせながら読んだ。第三者の立場としてなら、会議ですぐ使う資料のコピーとシンク掃除、優先順位はどちらかなんてゼロコンマ一秒で答えが出るのに、当事者になった時冷静な判断ができる自信はない。

掃除のプロ(自称)が使ったスプレーが実際には何に反応して色を変えたか不明だが、人間の体も生活空間も菌だらけなのは確か。人は無菌空間では生きていけない。

課長が出社しなくなって、性格が悪いと思いつつ自分も喜んだ。目くそ鼻くそを笑うとはこのことである。

心に生まれた闇を、自分で処理できるような心の強い者には、憑き物は決して取り憑くことができないのだ。

という一文にギクッとした。自分が完全に憑かれる側の人間であることに泣いた。周囲の人達は逃げてくれ。

いやな奴を 排除するのも いやな奴

世の真理だと思う。だから排除してはいけないというわけではなく、己も同列の人間であることを自覚すべきだ、という意味だと解釈した。

西洋蒲公英

みたび胃をキリキリさせながら読んだ。客観的には自分も同世代だし、出産どころか結婚からも恋愛からも対極の位置にいるし、一生するまいと心に決めている。さすがに一万超えの格言Tシャツを衝動買いするほど愚かではないつもりだけど。ということは猫魂に言わせれば私は、「ひとりでいいと肚を決めている女」なのだろう。人生諦めも大事だ。潔子の寂しさは、猫と一緒に暮らすだけでは埋まらないのか。

産後うつ、育児うつを頻繁に耳にするので、作中で描かれた子育て中のママさん達には違和感を拭えない。一番手のかかる時期なのに、呑気に旧友とメールし合っている余裕なんてあるの? そのメールの内容、嘘とまではいかないまでも脚色が多分に含まれると思うし、そもそもこれ、完全なマウントじゃん。自分の方が貴女なんかより幸せなのよウフフってことじゃん。腹立つ。でもこういうのってまともに反応したら負けなのよね?

田中太郎とやらはその場でケツを蹴り上げるくらいしてもよかったのでは。価値観が昭和すぎる。頼むから一生結婚しないでくれ、奥さんが可哀想だ。初対面の女の敬語より、テメーのその歪みきった根性を治せや。周りが誰も指摘してくれないから(してくれるうちが花とはよく言ったものよ)、一生気付かずにいるタイプ。

たんぽぽってなんとなく春らしくて朗らかなイメージだけど、初めて言いようのない畏怖を覚えた。

欧羅巴毛長鼬

針のように細い吹き矢で皮膚を刺すように、さり気なく毒を体内に注入する。

毒の定義が絶妙すぎて戦慄する。言われた側は「こういうふうに嫌だからやめてほしい」とは言語化できずに、ただなんとなくの不快感を心の底に蓄積し続け、数カ月後か数年後か数十年後かは定かでないが、いつかは溢れ出る。しかも言った側は、傷つけることを自覚して言っているのではなく、無意識レベルなこともあるからタチが悪い。

最終決戦を想像すると集合体恐怖症が発動する。可愛い存在も集まりすぎると怖い。

史上最弱ヒロインと思われていたヒロインが史上最強ヒロインへと変貌するシーンは興奮する。しかし猫アレルギーとはあまりにも哀れだ。人生とはままならぬものよ。

猫と鼬の比較以前に、猫を飼っている人間の前で猫を罵倒したら現実では縁を切られると思うので、安易に口にするべきではない。彼らは猫を飼っているのではない、猫を崇めているのである……。おそらく日本国内では、仏教キリスト教に続く三大宗教のうちのひとつに数えられるだろう。猫を家族にしている人がこの本を読んだら、信仰がますます加速するに違いない。