- 作者:知念 実希人
- 発売日: 2014/12/05
- メディア: 文庫
愛美=共犯者のラストは、致命的に絶望的で私好みだ。刑事の口から「ピエロが人質を撃ち殺し、その後自害した」という結論が一旦は語られた時、撃ち殺したのがピエロではなく「たまたま拉致され人質になった不幸な女性」だったなら一億倍面白いのにと嘆息したが、主人公が辿り着いた真相がその通りだと分かった時は全身の血が滾った。クライムサスペンスの結末はこうでなくては。
愛美を見つけたのに追えなかったエピローグも、完全犯罪をより強固なものにしていて秀逸。本当に「仮面」の役割を果たしていたのはピエロのそれではなく、女性の化粧だった――という強烈な皮肉に拍手。
「心から温度を奪っていく」という表現が琴線に触れた。自分も書く時使ってみたい。
医師って激務で24時間以上寝られずに外来に出るとか聞くのに、現役医師で作家ってこの作者のタイムマネジメントはどうなってるの。この人だけ1日40時間くらいあるの? ヤブ医者とかならまだ理解できるけど、解説を読む限りはめちゃめちゃ知見に富んだ優秀な医者。